NECは5月24日、Ethernetを利用してコンピュータの構成を拡張する技術「ExpEther(エクスプレスイーサ)」を活用した3製品の発売を開始した。6月22日から出荷する。
ExpEtherはLAN標準のEthernetとコンピュータ内部で活用されているPCI-Express標準バスを結び付けるものであり、システム拡張や性能向上の際にサーバやワークステーションなどの本体を追加するのではなく、CPUやHDD、グラフィックボード(GPU)など必要なコンピュータ資源だけを追加できる技術。Ethernetでの通信に比べて、大量のデータを効率よく転送でき、高速処理できるとメリットを強調する。
クラウドやビッグデータの処理は、高性能のCPUや大容量のHDDを搭載するサーバなどで処理されている。この処理のExpEtherを利用することで、データ量の増加に応じて効率的にシステム拡張やデータ転送の高速化が図れると期待されている。NECが2006年に開発している。
NECはExpEtherを搭載する製品として今回、サーバなどに搭載する「ExpEtherボード」(税別価格2万5000円から)、そのサーバにネットワーク経由でコンピュータ資源を接続するための「ExpEther I/O拡張ユニット」(同4万円から)、サーバやワークステーションに接続する端末「ExpEtherクライアント」(同3万5000円から)を発売する。
今回の製品を活用すれば、サーバやワークステーションとコンピュータ資源やクライアントをEthernet上で接続できる。従来はサーバの筐体サイズや電源容量の制限で拡張できなかった各種端末を、制限なしで接続できるようになる。各種の端末をEthernet上で共有できるため、物理的な配置が自由になり、柔軟にシステムを構成できる。
サーバやワークステーションと各種端末との接続にEthernetを利用するが、データ転送は通信プロトコルのTCP/IPを使用せずに、サーバやワークステーションに内蔵されるデバイスでの転送と同じ「DMA(Direct Memory Access)」転送を使う。
DMA転送は、CPUなどの処理を挟まずにメモリとメモリ、またはメモリとI/Oデバイスの間で直接データを転送する方式。継続的な読み出しを必要とするネットワークのパケット送信や音楽再生、映像配信などの機能をデータ通信のために資源を割くことなくできることから、高速処理が実現できるという。
今回の製品は大阪大学の汎用コンピュータシステムに導入が決まっている。これまで教室で学生が使用している約600台のPCにExpEtherボードを搭載し、サーバ室に移設して集中管理する。教室内の消費電力を低減させることができる。学生は教室でExpEtherクライアントを介してPCをリモートで利用することになる。夜間など授業のない時間帯は、サーバ室にあるPC資源をExpEther経由で、たとえば大容量計算などほかの用途にも有効利用することも可能だ。