為替の差を技術でカバーできない--電機メーカーが悩むテレビ事業 - (page 2)

大河原克行

2012-05-29 09:00

 ソニーは年初に2700万台の年間出荷を見込んでいたが、2011年度の出荷台数は前年比13%減の1960万台。

 パナソニックは、年度初めに2500万台を計画していたが、これを10月に1900万台の計画に下方修正するとともに、さらに2月には1800万台へと再度修正。最終的な実績は前年比13%減の1752万台となった。

 さらにシャープは、年初計画の1500万台を2011年10月の上期決算発表時に1350万台へと下方修正したのに続き、今年2月には1280万台へと再び下方修正。実績はパナソニック同様の2度の修正を下回る前年比17%減の1229万台となった。

 東芝も当初計画の1500万台には到達しなかったことを明らかにしている。

 そして、2012年度の販売計画も慎重だ。国内各社は相次ぎ前年割れの計画を立てている。

 ソニーは前年比11%減の1750万台、パナソニックは12%減の1550万台、シャープは19%減の1000万台、日立製作所は47%減の80万台の計画だ。唯一、東芝が前年比7%増の1600万台を目指している。

 2012年度もテレビ事業の赤字が見込まれるソニーでは、「数量を追うのではなく、収益改善を優先する」との方針を打ち出す。

 収益重視は、2012年度における各社共通の姿勢だといっていい。

円高が生み出す過剰在庫

 もうひとつ、テレビ事業において見逃せないのが、テレビの主要部品であるパネルの事業構造改革である。

 ソニーは、2011年度の構造改革の最大の目玉として、韓国サムスンとの液晶パネル生産のS-LCDの合弁を解消。「すでに2011年度下期から合弁解消効果が出ている」とする。2012年度には、これがさらなる固定費削減効果につながるとみている。

 また、パナソニックは2011年度の構造改革のなかで、拠点再編などで144億円、固定資産関連で2671億円を計上。パネル生産拠点の統廃合に力を注いだ。プラズマディスプレイパネルの生産拠点を3拠点から1拠点に集約。液晶パネル生産については、2拠点を1拠点に集約し、適正な体制へと移行を図った。

 パナソニックでは、2006年に尼崎のプラズマディスプレイパネル工場を建設したのに続き、2008年には日立製作所から茂原の液晶パネル工場を買収し、旺盛な薄型テレビ需要への体制づくりを整えた。だが、2009年のリーマンショックや欧州の金融危機を発端とした景気低迷、長期化する円高基調の影響を受けたグローバル価格競争力の減退などが過剰在庫を生み出し、生産拠点の稼働率が低下。これが赤字に影響した。

 こうした環境に陥ったのは、シャープも同じだった。

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