IDC Japanが5月30日に発表した中国のIT市場動向によると、中国はアジア太平洋地域の最大のIT支出国である日本を追い抜かそうとしているという。2013年には中国のIT市場規模は1730億ドルとなり、日本の市場規模を約4%上回ると予測している。
中国でのIT支出が拡大する要因は2つと説明。1つが消費者のIT需要、もう1つが中国政府の第12次5カ年計画によるIT支出機会の拡大になる。
IDC ChinaバイスプレジデントのLinafeng Wu氏は、消費者のIT需要について「消費者向けの機器はより高度になっており、中小規模の都市にも拡大している」とコメント。以下のようにその背景を説明する。
「消費嗜好が変化し、スマートホーム、高機能の自動車と同様に、高度な住居や不動産の管理が拡大することで製造業や流通業に加えて、産業間のつながりによるサービス業のビジネスも含めて急速に成長している。結果としてITの強い需要が見込まれる」
Wu氏は中国の消費者向けIT市場について「高機能端末が促進要因となって、2012年は前年比29.8%増。スマートフォンやタブレットなどで個人向け機器は堅調な成長が続く」とみている。企業向けIT市場については「エンドユーザーにおけるアプリ需要の高まりで、高い成長が見込まれる。消費者と企業内個人のモバイルアプリの利用拡大で、企業向けのハードウェアとソフトウェア、システム構築が促進される」と予測している。
IDC Chinaカントリーマネージャー兼IDC's Greater China ResearchバイスプレジデントのKitty Fok氏は、消費者のIT需要について「情報化社会の水準向上のために中国政府によるeコマースの展開支援が進んでいる。電子決済とオンラインショッピングの拡大で、銀行の決済基盤の投資が促進される」と説明。「オンラインショッピングでは、eコマースの専業企業だけでなく、製造や流通、旅行、金融の各業界などがインフラ投資を拡大させる効果が見込まれている」と語る。
中国政府による中央集権的な需要が新たなITニーズを生み出し続けているとIDCは分析する。地域医療や医療クラウド計画では大規模なIT支出が見込まれ、地方政府や都市政府は、スマートシティやデジタルシティといった計画が始まっている。これらの動きは、IT市場の成長における主要な促進要因となり、ITベンダーは都市部での市場拡大のために継続して投資している。
2011年末までに、最初に実施された2カ所のスマートグリッドの実証実験プロジェクトが完了している。これによってIT支出は大きく拡大が見込まれている。
“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”も急速な発展段階に入り、この動きによってシステム構築とすべてのIT製品だけではなく、組込システムや通信システムの需要も急拡大。省エネルギー、環境保護産業でもITの利用は急速に拡大している。IoTの発展でITを基盤にした省エネルギーの仕組みの改善も見込まれるとしている。
中国政府が進める第12次5カ年計画についてFok氏は「IT支出規模は第11次5カ年計画と比較して拡大している。政府からの支援と消費者のIT需要の拡大で、2013年には中国はアジア太平洋地域でIT市場規模が最も大きな国になる」と説明している。