大企業でのハイブリッドクラウド構築--パブリッククラウド企業幹部からのアドバイス10選

Paula Rooney (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2012-06-01 07:30

 「エンタープライズクラス」で行くか、それとも「クラウドクラス」で行くか?このところ大企業は、最適なハイブリッドクラウドの構築方法を見極めるべく、パブリッククラウドのプロバイダーたちに目を向けている。先日開催された「Interop」では、RackspaceやTerremark、NetScoutの幹部たちが、こういった複雑なプロセスにおいて行っておくべきことを惜しげもなく披露してくれた。

 過去において、サービスプロバイダーは自らのデータセンターを構築するためのノウハウを身に付けようと大企業に目を向けていた。しかしクラウドの時代において、その立場は完全に逆転している。

 Rackspaceの最高技術責任者(CTO)であるJohn Engates氏は先のInteropにおけるパネルディスカッションで「最初の7年間、われわれは常に大企業に目を向け、彼らのやっていることを真似ようとしてきた。現在では、大企業がわれわれに目を向け、われわれの行っていることをお手本にしようとしている」と述べるとともに「ハイエンド(のコンピューティング)はエンタープライズクラスと呼ばれていた。今ではクラウドクラスと呼ぶべきなのかもしれない」と語った。

 まだ大勢は決まっていないものの、ほとんどのクラウドプロバイダーは混在型、すなわちハイブリッドクラウドモデルが生き残ると確信している。

 では、サービスプロバイダーたちは最近では、大企業に対してどういったアドバイスを行っているのだろうか?

 1)何がクラウドコンピューティングであり、何がそうでないのかを押さえておく。仮想化はクラウドコンピューティングを支えるプラットフォームであるものの、クラウドコンピューティングにおける側面の1つでしかない。Engates氏によると、仮想化とクラウドコンピューティングの基本的な違いは、ワークロードに対する自動化とセルフサービスの兼ね合いであり、サーバを1台配備するのに6週間もかかるような旧来のプロセスをどの程度まで除去できるのかということにあると述べている。

 Engates氏は、「コンソールの前に座って仮想マシンを構築することが、クラウドコンピューティングなのではない」と述べるとともに、大企業はオンデマンド型のサービスをユーザーに提供するために、内部プロセスを変革し、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたプラットフォームの採用に向けて舵を切っていかなければならないと主張している。

 Rackspace、およびVerizonが所有するTerremark、NetScoutの幹部たちが先のInteropで述べたところによると、サービスプロバイダーはインフラ(IaaS)とソフトウェア(SaaS)、プラットフォーム(PaaS)というサービスを立ち上げ、稼働させてきているという。今やクラウドプロバイダーは、次世代のストレージやネットワークといったサービスを提供するうえで必要となる複雑さに取り組んでいるのだ。

 2)大企業はハイブリッドクラウドというコンピューティングモデルの採用に向けて舵を切っていく必要がある。とはいえ、こういった混在型クラウドモデルの採用を本格化させる前にパブリッククラウドを用いて試行を行い、その利点を体感しておくべきである。時間は十分にある。現在のところ、パフォーマンス関連やQoS関連のツールが成熟しきっていないがゆえに、クラウド上におけるミッションクリティカルなアプリケーションの稼働実績はほとんどないのである。

 Verizon傘下のTerremarkにおいてクラウド製品担当バイスプレジデントを務めているEllen Rubin氏は、「大企業はあなた方が達成したこと、そしてそれを用いて彼ら自身が実現したいことを達成できるようになるまでに5年はかかるだろうと考えているが、こういった経験というものはすぐに真似ることができない」と述べている。また、大企業に対しては、焦らず、パブリッククラウド上で何らかのワークロードを配備するところから始め、スケーラビリティの柔軟性や、セルフサービスの利点を試行によって評価したうえで、ハイブリッドクラウド型のプラットフォームへの移行に本腰を入れるようアドバイスしている。

 いったんハイブリッドクラウド型のインフラを開発する準備が整った、つまり社内にクラウド環境を構築するとともに、Rackspaceや「Amazon EC2」といったパブリッククラウドの利点を享受できる準備が整った段階で、大企業は青写真を描き出すにあたり、業務面と技術面における難題と向き合う必要があるという。

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