SAPジャパンは4月末、アビームコンサルティングとアクセンチュアの2社と協業し、社屋内にそれぞれの共同プロジェクトルームを開設すると発表した。SAPが従来のERP事業から、モビリティ、インメモリ、クラウドなどに軸足を移しており、技術面と人材面ともに、主要パートナー企業である2社との関係を再構築する必要が背景にあった。
新たな局面を迎えた協力関係について、SAPジャパンのバイスプレジデントである桐井健之氏、佐藤知成氏、上野豊氏の3人と、アビームの中野洋輔プリンシパルに話を聞いた。
左からソリューション営業統括本部の桐井氏と同本部長の上野氏、アビームの中野氏、パートナー本部 本部長の佐藤氏
「2011年度のSAPジャパンの売上高で、ERPよりもERP以外の売り上げの方が大きかった」と桐井氏は話す。内訳はERP45%に対し、その他が55%という。好調が伝えられるインメモリデータベース「HANA」やビジネスインテリジェンスソフトウェアの「BusinessObjects」、さらに2010年に買収を発表したSybaseが持つデータベース関連製品も主力になりつつある。
もともと、SAPが持つ250社におよぶパートナーの中でもアビームは最大規模だったが、従来はERPであるR/3の導入プロジェクトを前提にしていた。SAPが急速に製品展開をシフトさせる中で、アビームの中野氏は「“ニューSAP”になっても引き続き最大のパートナーでありたい」とSAPとの関係の重要性を語る。
これまでERPを前提にしていたため、今後もこの蜜月を維持するためには、アビームにSAPの新たなソリューションを知るコンサルタントを増やす必要があった。アビームでは既にHANAのトレーニングを50人以上が受けているなど、準備は進めてきたという。
ただし両社が口をそろえるのは「製品カットではなく、ソリューションを提供したい」という点。ERP、HANA、MDM(マスターデータ管理)などのソフトウェアを販売するというよりは、アビームがコンサルティングサービスを実施し、各業界のさまざまな課題への解決策としてSAP製品を導入したい考えだ。
上野氏は「業務シナリオ作成などはコンサルティング企業のアビームの方が強い。一方、製品についてはSAPの方が強い」と指摘。アビームが業務コンサルをし、SAP製品をうまく組み合わせ、ソリューションとして提供するというのが、協業シナリオだ。佐藤氏は「SAPからすれば、独自のデリバリー組織のようなイメージになる」と話す。
具体的には、どんな協力関係が考えられるのか。桐井氏によれば、例えばiPadなどモバイルデバイスを使った電子カタログとERPなどとの連携が考えられるという。通常の電子カタログは文字通り、写真や文字などで構成されるカタログ情報が電子的に格納されているだけのもの。
一方で、SAPが目指すのは基幹システムとこれらのフロントエンドツールの統合だ。イメージとしては例えば、化粧品店舗向けのモバイル端末の開発などが挙げられる。この端末は単にカタログ情報が掲載されているだけではなく、基幹システムと連携している。化粧品などの商品ついて、在庫情報をリアルタイムに確認後、その場で販売することもできるわけだ。
バックエンドとフロントエンドの各システムが直接かつリアルタイムにつながっている点が画期的であり、桐井氏は「“(需要)予測”とかバッチとか言ってる場合じゃない」と強調する。
一方、アビームの中野氏も新たなソリューションのイメージとして「キャッシュ、為替、金利の関係をうまく利用した新たな財務戦略の立案」など、会計業務での例を挙げて説明した。
アビームからSAPジャパンのオフィスに常駐する人数など詳細はまだ未定という。アビーム社員のSAPジャパン常駐時の仕事として「具体的な案件を核にした協業をする」としている。決して「研修」のようなイメージではないそうだ。
提携による目標としてアビームは「SAPビジネスのうちERPを除く部分の売上高を3倍に増やす」としている。
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