変化する情報システムが新たなビジネスを生む--セールスフォース 宇陀社長

大河原克行 2012年06月05日 19時39分

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 セールスフォース・ドットコムは6月5日、六本木アカデミーヒルズにおいて「Salesforce.com Partner Summit 2012」を開催した。

 約250社のパートナー企業の幹部が参加。「クラウドビジネスとセールスフォース・ドットコムの『いま』が見える」をテーマに、同社のパートナー戦略や最新ビジネストピックス、大規模導入やソーシャルエンタープライズの導入などに関して、最新事例が紹介された。

 セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長は、同社の最新動向とパートナーの成功事例をテーマにした基調講演に登壇し、「経営者が本当に求める見える化は、過去の統計データからいまを分析するのではなく、近未来の動きをみたいということ。私が経営者やCIOと話をする際には、近い将来に対してどう見える化するかという内容でお話しすることが多い」と切り出し、そこに同社サービスの意味があることを強調してみせた。

セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長
セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長

 「業務系システムからデータを抽出しても、将来を予測することは不可能。フロントから様々な情報を吸い上げて、それによって将来を予測することが求められている。業務システムの情報とフロントから得られる情報の2つを組み合わせて、見える化することが求められている」などとした。

 一方で、セースルフォースの製品やサービスが世界および日本で関心を集めている事実を、業績や導入実績を通じて示してみせた。

 同社の2013年度第1四半期(2012年2〜4月)の売上高は、前年同期比38%増の6億9500万ドル、営業キュッシュフローが前年同期比53%増の2億1300万ドルという成長と安定性を持っていること、毎年100億ドル以上の投資を続けていることを示しながら、「株価の成長率をみると、Appleと同じような曲線を描いている。それに対してOracleやMicrosoftの株価は、ここ数年フラットである。その一方でSalesforce.comの時価総額はAppleの25分の1以下、Microsoftの10分の1以下であり、まだまだ伸びしろがあり成長が続くだろう。クラウドビジネスは、不透明な経済環境のなかでも継続的に顧客にサービスを提供して収益を得るという仕組みで、IT企業側にもメリットがある。これは、Salesforce.comだけでなく、パートナーも同様のメリットを享受できる」などとした。

 また、先頃、日本生命が約7000人が利用する保険契約管理・サービス提供のサポートシステムを、わずか1か月という短期間で稼働させた事例を紹介しながら、「当社製品の顧客の場合、システム稼働までの期間は約3カ月が目安。プロトタイプの稼働では約3週間以内となっている」などとする一方、「私は社長に就任して以来、Fortune 500社に入る約70社の日本企業にセールスフォースを導入してもらうことを目指してきた。これを黒沢映画で有名な『7人の侍(サムライ7)』にかこつけて、『サムライ70』と呼んできたが、現在、このうち約8割の企業で採用してもらっている。これをさらにどう広げていくかがこれからの我々のビジネスの課題になるが、これは我々だけではできない。パートナー各社に協力してもらいたい」と呼びかけた。

  • 他のIT企業と株価のパフォーマンスを比較してみせた

  • 大手企業と時価総額に大きな差があるため、まだ伸びしろがあると強調

  • Fortune 500の日本企業66社のうち約8割が同社サービスを活用

 続けて、今週末に予定されている製品アップデートの「Summer'12」において、Chatterで複数ファイルの投稿機能や複数取引先責任者への活動履歴の提供、レポート・ダッシュボードの機能強化などを行う一方、「これまでは年3回行われるバージョンアップのたびに、日曜日未明に4〜5時間停止していたが、今回からは停止時間は5分間ですむようになる」という点を強調。

 さらに「年3回のバージョンアップでは、常にお客様の声を反映した機能強化を図ってきた。これを15万社以上のユーザーを対象に、100万以上の設定環境やさまざまなシステムとつながっている状況に対して、ノントラブルでバージョンアップしてきた。パートナー各社にも、バージョンアップ後の最新の情報を得ていただき、その特徴を知り、お客様に見える化の提案をしてもらいたい」などと語った。

  • 今週末に機能強化を図る

  • アップデートにともなうサービス停止時間が5分に

 パートナーの成功事例としては、日本オプロの例を紹介した。

 現在、日本オプロではクラウドビジネスの比率が29%を占めており、過去5年間で30倍にビジネスが成長している。同社の場合、自社開発の帳票クラウドサービスプラットフォームを提供しているのが特徴だという。

 「すべてをセールスフォースのサービスで提供するのではなく、セールスフォースの顧客に対して、自らの価値を提供するビジネスも創出できる。その点では、OracleやMicrosoftのビジネスのように、製品やサービスを再販するのではなく、自前のアプリケーションでビジネスができる点が大きく異なる」とした。

 現在、App Exchangeパートナー、OEMパートナー、コンサルティングパートナー(インプリパートナー)、VAR(リセラー)などが開発した100万ライセンス以上のアプリケーションがすでにイントールされており、「クラウド=セールスフォースというビジネスではなく、エコシステムを軸にしたビジネスが特徴である」とした。

 また、セールスフォースの2012年度における新規案件のうち、約40%がSFA以外の製品の売上げであることを示しながら、「日本では、CRMが5割、コールセンタービジネスが約1割。米国では約3割がコールセンタービジネスであるが、日本でもいよいよデータセンターが稼働し、コールセンター向けアプリケーションビジネスではさらに優位性が発揮できるだろう」などと語った。

  • 日本オプロのクラウドビジネスの比率は29%に成長

  • 各パートナーが開発したアプリケーション

  • セールスフォースの新規案件の比率も変わりつつある

 さらに、企業システムにおいては、システム構成基盤の優先度が大きく変化。顧客と接点を持つフロントシステムが重視されるとともに、これによって業務システムとの連携が重視される新たなパラダイムシフトが起こっていることを指摘。「これがビジネスチャンスになる」として、「既存システムとの連携」「新規システム構築」「ソーシャルエンタープライズ」の観点からのその変化に言及した。

 とくにソーシャルエンタープライズに関しては、「10数年前には、ホームページはいらない、ホームページを作ってモノが売れるのかという議論があったが、いまやホームページを持っていない会社はなく、ホームページが販売に直結することを誰もが理解している。今後は、顧客接点の新たな手法としてソーシャルネットワークが重視されるだろう」とした。

 「米国には膨大な数のソーシャルネットワークがある。これまではコンシューマー系のパブリックサービスしかなく、企業が利用するという文化がなかった。いまはそれに呼応した企業向けソーシャルシステムが求められている。たとえば、トヨタ自動車がトヨタフレンドのサービスを提供する際には、企業が提供する高いセキャリティレベルが求められる」などと語る一方、「メールをはじめとするインターナル(社内)のコミュニケーション、ポータルによるエクスターナル(外部と)のコミュニケーションは、いずれもプル型であったが、ソーシャルエンタープライズでは、インターナルもエクスターナルもパブリックもすべてプッシュとなる。そして、これを支えるのがモバイルデバイスだ。新たなパラダイムのなかでは、モバイルが必須になる」などと語った。

  • 一言でいえば「コンシューマライゼーション」ということになる

  • 企業の情報システムに変化が起こっており、それがビジネスチャンスになると強調

 講演の最後に宇陀社長は、「クラウドは多くの会社で採用されているがまだ初期段階である。また、売れ筋はSFAからプラットフォームやソーシャルCRMへと変化。さらに、これからはソーシャルエンタープライズの導入に関して、様々な企業で検討が開始されるだろう。新たなチャンスが生まれており、この変化をパートナー各社のビジネスの成功につなげてもらいたい」と締めくくった。

 イベントでは、電通やデロイトトーマツコンサルティングなどのパートナーからの導入事例などが発表されたほか、パートナーアワードの表彰、パートナー向け支援策の紹介なども行われた。

パートナーアワードの表彰式の様子。宇陀社長から記念の楯が手渡された
パートナーアワードの表彰式の様子。宇陀社長から記念の楯が手渡された

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