これについては、何通りもの見方がある。Jobs氏はこのとき、すでに捨ててしまったアイデアをもてあそんでいる状態で、伝記作家に対して製品化される可能性のあるAppleの製品の情報を隠すという必要は感じていなかったのかもしれない。あるいは、自分の死期が近いのを悟り、世間で同氏がいなくなればAppleのデザインに対するレーザーのように絞り込まれたこだわりは失われると思われていることを考え、将来の主要な製品にJobs氏が認めていたというお墨付きを与えておきたかったのかもしれない。
Cook氏は製品に関してJobs氏よりもオープンな態度を取っている。同氏は最近のGoldman Sachsのカンファレンスで、Appleは基本的に「趣味」に走ることはないが、そこに「何かがある」と考え、「Apple TV」に関しては違う考え方をした、と述べている。
同氏は次のように発言している。「そして、もしわれわれが自分たちの直感に従い続け、その線をたどり続けたとすれば、もっと大きなものを見つけていたかもしれない」
Appleが新しい市場に参入するのは、その市場に本当の変化を起こすことができ、同時に大きな収益を上げられると考えたときだけだ。わたしは数カ月前、Appleはテレビ市場で本当の変化を起こすことができるという記事を書いた。しかし、今では物事はあまりはっきりしなくなってきている。
Appleテレビの実現可能性
この数カ月間、一部のアナリストは、うわさされている製品の実現可能性について、製品の仕様や小売りスペースの利用効率の悪さに対する疑問を引用しながら、懸念を表明している。
Appleがモバイルに力を入れており、机の上に置けるサイズの完全な製品ラインアップを持っている時に、大きなテレビを作るというのには違和感を感じざるを得ない。
さらに、同社は絞り込まれた製品ラインアップで知られている。また、「iPad」が発売された直後であり、まだかなりの売れ行きの勢いがある時期に、この製品が発表される可能性があるだろうか?マーケティング的に力が分散してしまうのではないだろうか?
Cook氏は、Jobs氏ならば決してしなかったやり方で話をしているが、同氏はすでに地位を確立しており、Appleを自分のやり方で作り直している。同氏は前CEO兼創立者のやり方から外れることを恐れていない。
ひょっとすると、Jobs氏は本当に未来に祝福を与えたのかもしれず、また想像を絶することだが、われわれはAppleが未来の製品についてのコメントを始めた時に遭遇しているのかもしれない。現時点では、Appleの変化の速度と考え方を追いかけるのは難しく、簡単な予想は阻まれている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。