本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで語った明言をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今週は、新アプリケーションを発表したSAPジャパンの桐井バイスプレジデントと、最新技術動向の説明会を開いたストラトスフィアの浅羽社長の言葉を紹介する。(ZDNet Japan編集部)
「SAPのDNAはアプリケーションにある。それにHANAをサポートすることで、さらに新たな価値を提供するのが私たちの最重点戦略だ」(SAPジャパン 桐井健之 バイスプレジデント)
SAPジャパンは5月29日、インメモリデータベース「SAP High-Performance Analytics Appliance(HANA)」で処理を高速化したグローバル経営管理アプリケーション「SAP Planning and Consolidation」の最新版を発表した。桐井氏の発言は、その発表会見で、同製品事業の責任者としての意気込みを語ったものである。
同ソフトは、企業の予算編成や計画策定に代表されるグローバルでの経営管理要件をサポートするアプリケーション。最新版ではSAP HANAに対応することで、例えば、50万レコード以上の巨大なレポートを作成するクエリを従来の21倍、予算データの登録であれば従来の3倍の速さで実現するなど、処理能力を飛躍的に向上。企業がビッグデータを活用して、より精緻な計画の策定と実行の管理をリアルタイムに行うための俊敏性を提供するとしている。
最新版の詳しい発表内容については関連記事などをご覧いただくとして、ここではこのアプリケーションのカテゴリに関する話と対象ユーザーについて注目したい。
SAPでは重点事業の1つにアナリティクス分野を挙げており、BI(ビジネスインテリジェンス)、EPM(エンタープライズ・パフォーマンス・マネジメント)、GRC(ガバナンス/リスク/コンプライアンス)といった3つのカテゴリで製品群を提供している。今回発表した製品は、この中ではEPMに位置付けられる。
実は、今回発表した製品の名称には、これまでSAPの後に同社が買収した「BusinessObjects」の名が入っていたが、今回から「SAPのアナリティクス事業が認知されてきた」(桐井氏)として外した。HANAのサポートもあっていよいよSAP製品として一本化したわけだが、一方でBI製品にはまだ「BusinessObjects」の名が残っている。BI分野ではまだまだ外せないブランド名なのだろう。SAPのしたたかな戦略が見て取れる。
対象ユーザーについては、「経営管理というとトップマネジメント向けというイメージがあるが、日本ではむしろビジネス現場で活躍するミドルマネジメント層に注目している」(桐井氏)という。日本の企業組織はボトムアップで意思決定がなされることが多い、との読みのようだ。この点については、BIにしてもEPMにしても以前から論議があった勘所だ。
だとすると、コストパフォーマンスが決め手になる。その点、今回の発表で残念だったのは、価格が明示されなかったことだ。