HPのサポートで完成した「マダガスカル3」
基調講演後半のゲストとして招かれたのは、映画会社であるDreamWorksのCEO、Jeffrey Katzenberg氏だ。
「シュレック」や「マダガスカル」といったCGアニメーション映画のヒットで知られるDreamWorksは、シュレック第1作の製作時にCGレンダリングのためのシステムをHPより導入。その後、より広範なパートナーとして、映画製作システム全般の機材提供、共同開発などを続けている。
「テクノロジーがなければ『マダガスカル』を作ることはできなかった。そして、テクノロジーはいつも必ず思い通りに動いてくれるとは限らないが、HPのスタッフのサポートによって助けられてきた。DreamWorksでは12年間、HPとつきあってきたが、その関係はこれ以上ないほどにスムースだった。新たにMegというリーダを迎えて、未来は明るいと感じている」(Katzenberg氏)
Whitman氏とは25年来の古い友人でもあるというKatzenberg氏は、2004年にDreamWorksがアニメーション部門を分社化し、株式公開を行った際に、ボードメンバーとしてWhitman氏を加えたエピソードを紹介。「以前から、彼女のエグゼクティブ、リーダー、起業家としての資質は卓越したものだった。DreamWorksのボードメンバーとして参加した際も、彼女は本当に素晴らしい仕事をしてくれた。大きなイメージを語るだけではなく、はっきりとしたビジョンを提示できる、滅多にいないリーダーだ」と、彼女自身の有能さについて表現し、HPでもその能力を発揮してくれるはずだと聴衆にアピールした。
「技術が必要なビジネスであれば、HPが良いパートナーになってくれる」
DreamWorksとHPとのパートナーシップにおいて重要な点は、CGによるアニメーション製作という分野で「潤沢なコンピュータリソース」「最新の製作環境」「複雑になる製作環境をシンプル化するためのプロセスや技術」といったものが必要となっているためだ。
高精細化や3D化といった技術的な側面に加え、アニメーションをより滑らかに表現したり、キャラクターに個性的な動きや表情をつけたり、臨場感のある背景をアレンジしようとすればするほど、必要となる計算リソースは増え、そのプロセスは複雑化していく。
Katzenberg氏は「CPUの処理能力は2年で倍になる」という「ムーアの法則」をひきながら、「DreamWorksには、『ジェフリーの法則』というのがある。ムーアの法則以上のスピードでCPUパワーが必要になるというものだ」と述べて、リソースを必要に応じて調達できるクラウドコンピューティングのような仕組み、マルチコアプロセッシング、大規模分散処理といったものが、DreamWorksの映画製作に欠かせない技術となっていることを示した。HPが提供するクラウドについては「フレキシビリティ、セキュリティなどの面でも、DreamWorksの事例が良いテストベッドになっている」という。
HPとのパートナー関係は、処理能力の調達という部分のみに留まっている訳ではなく、より大規模な研究開発の分野にもおよぶ。例えば、製作途中のイメージを、完成品と同等のフルレゾリューションに高速に変換して確認するための技術や、よりカラーのサポート範囲が広いフラットパネルディスプレイの開発といった分野でも、互いに協力を行ってきたとする。
「かつては、コンピュータの処理を待って仕事をしていた部分も多かったが、多くの研究開発の成果によって、現在は自分たちの想像力のスピードそのままで製作ができるようになった。ハイパフォーマンスコンピューティングで、あらゆるビジネスは変わっていく。より速く、より良く、より安くという3つの要素をすべて成立させるのは、これまでは難しかったが、今では可能になっているのだ」(Katzenberg氏)
最後にKatzenberg氏は、HPとのパートナーシップによる最近の成果として「マダガスカル3」の予告編と、両社のパートナーシップの歴史を紹介した短いフィルムを上映した。
「DreamWorksでは、今や、すべてのフィルムの製作にハイパフォーマンスコンピューティングやセキュアクラウドといった技術が必要となっている。HPとは既に10年以上、重要なパートナーとして関係を築いてきた。われわれの組織がこれほどまでに成長するには、この関係が必須だったのだ。今日、会場にいらっしゃるみなさんのビジネスが、どういった分野のものであれ、そこに技術が必要なのであれば、HPが最高のパートナーとなってくれるはずだ」(Katzenberg氏)