「超リアルタイムビジネスがパラダイムシフトを引き起こす」:SAP共同CEO - (page 2)

三浦優子

2012-06-13 13:49

リアルタイムなデータを使った将来予測

 モバイル、クラウドとともにパラダイムシフトの要となるのがSAPが注力するインメモリデータベース(DB)。リアルタイムを求めるモバイルとクラウドサービスにおいては、もはやディスクにデータを格納していてはスピードが十分ではないという。

 「ディスクはメインメモリに比べ、時間がかかる媒体。インメモリDBによって、シンプルで今までにはなかったアプリケーションが生まれるだろう。蓄積されたデータを使った過去からの予測ではなく、リアルタイムなデータを使った将来予測、最先端シミュレーションが可能となる」

  • パラダイムシフトの要因となる3つの技術

 3つのテクノロジによって、コンピュータを利用した際の生産性が上がり、より柔軟性の高いエンタープライズシステムが実現し、それが企業の成長に大きく寄与することになるとSnabe氏は指摘する。そして、それが実現したのがエンタープライズ仕様のインターネットの実現だという。

 「当社では“インテリジェントなビジネスウェブ”を標榜している。これはコンシューマーのためのインターネットではなく、エンタープライズ仕様のインターネットを指す。現在はコンシューマーで利用されているソーシャルによるコミュニケーションと同じコンセプトがビジネスでも活用できる世界。BtoBでリアルタイムに繋がることができ、原材料の調達から最終商品の提供までが全てインターネット上で実現する世界」

 さまざまな業種がこの恩恵を受けると見込んでおり、例えばリテール分野では、ビジネスのサプライチェーンに携わるすべての人が各々の顧客のニーズを理解し、コストを下げながらサービスレベルを上げることが求められるが、これが実現可能となる。

 全世界で問題となっているエネルギー問題についても、必要なエネルギーと時間を割り出し、管理する「スマートホーム」を実現することで、エネルギーの必要量を大幅に抑えることに繋がるという。

 ヘルスケア分野でも各患者の病状を、インメモリDBによって早期に把握することで、医療コストを抑制しながら、治療にも大きなプラスとなると説明する。

 実際にこうした新しい技術を将来ではなく、現在利用しているユーザーとしてバイオ分野のビジネスを行う三井情報がSAPのインメモリDB「HANA」を使うビデオが紹介された。

  • SAPが注力する5つの分野

 最後にSnabe氏はSAPが注力する5つの分野をあげ、「イノベーションリーダーシップを5分野すべてで実現する」とテクノロジで市場をリードすることを宣言した。その上で次のようにアドバイスして講演を締めくくった。

 「コアアプリケーションが多すぎると、コストがかかり過ぎる上、一貫性がなく、柔軟性にも問題が起こる。統合アプリケーションによってその問題を回避する。これはERPだけでなく、アナリティクスでも同様でリアルタイムに正確なデータを得るためにもスイート活用が望ましい。次にエンタープライズで利用できるモバイルネットワークを活用してほしい。そのためにSAPではAribaなど買収を進めている。三つ目に新しいレベルのビジネスインテリジェンスを導入し、四半期ごとに過去情報を分析するだけでなく、HANAを活用し、新しいインテリジェンスレベルを実現する。これまでの何時間もかかったレポート作成が1秒以内にできあがる世界がすでにある。われわれSAPは世界のデータをより良くするために貢献していきたい」

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