Forrester Researchの調査によると、企業によるApple製品への支出は2012年に58%増加し、「iPad」や「Mac」に対する支出額は190億ドルに達するという。これは前年の約120億ドルを上回る値であり、2013年には280億ドルという額に至るだろうという。
このことは、ここ数十年にわたって築き上げられてきたあらゆる社会通念に反している。何年も前から、エンタープライズコンピューティングではハードウェアのことよりも、利用可能なあらゆるマシン上でソフトウェアを実行できるという能力の方に重きが置かれてきた。Microsoft Windowsも、ハードウェアを日用品に据えたこういったコンピューティングモデルに沿うものとなっている。もちろんLinuxも、ほとんどのマシン上で稼働する。ハードウェアの日用品化によって、コンピューティングのコストが劇的に低下するとともに、その柔軟性も向上したわけである。しかし、Mac OSはMac上でしか稼働しない--ハードウェアとソフトウェアが一体化されたパッケージとなっているのだ。
Appleは、こういった日用品化と柔軟性の時代にあって、誰もが放棄して久しいハードウェアとソフトウェアの一体化モデルをどのようにして維持しているのだろうか?この疑問を突き詰めていくと、最後にはビジョンに到達する。ほとんどのベンダーは製品を売ろうと考えている。一方、Appleは革命を売ろうとしているのだ。Appleは、コンピューティングというものを、地球上のすべての人々にとって手に入れやすく、敷居が低く、使いやすく、そして楽しいものにするというビジョンに、良い意味でも悪い意味でもこだわることで前に進んできているのだ。確かに、Appleの目的には金儲けもあるだろうが、世界に伝わっているイメージはそういったものではない。このため、最高情報責任者(CIO)やITマネージャーたちは関心を示し、注目することになるのだ。
とは言うものの、Apple製品の導入を推進しているのはCIOではない。iPhoneやiPad、Macといった同社の製品がもたらすエレガントさや性能、使いやすさといったものに世界が魅了されるとともに、同社の製品は一般社員の手によって企業内に浸透しているのだ。
われわれは、この流れの行く末を見極めることになるだろう。テクノロジ市場というところは、イノベーションに対する熱意を失ったベンダーが生き残るには厳しい場所であり、毎年のように激動が起こっている場所でもある。しかし今のところ、Appleが最高の地位につけている「その(it)」企業なのだ--大文字表記の「IT」部門が何を考えていようとも。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。