「社内向け」活用のポイントは「デバイス特性を活かした発生源入力」
まずは活用シーン分類の左側、「社内向け」のスマートデバイス活用について見ていこう。 この「社内向け」の活用は従来の携帯電話やノートPCの延長線上に位置づけられるため、比較的イメージしやすい。具体例として次のものが挙げられる。
- メールの内容やスケジューラの予定を外出先から確認する
- 部課長職が出張先や外出先からワークフローの承認を行う
注意いただきたいのは、ここでの「社内向け」「社外向け」という分類は「スマートデバイス活用によってコミュニケーションをとる相手が社内か社外か?」であって、「利用する場所がオフィスの中か外か?」という観点ではないという点だ。上記の例はいずれも利用場所は社外であるが、やりとりする相手は社内なので、「社内向け」ということになる。
だが、こうした活用方法は従来型の携帯電話でもある程度は可能だった。社外で業務をこなすことの多い社員の場合、既にノートPCを携帯しているケースも少なくない。では、スマートデバイスならではの「社内向け」活用はどのような点に留意すれば良いのだろうか?
そのヒントを与えてくれる調査結果がある。以下のグラフは年商500億円未満の企業に対し、スマートデバイスを導入している業務範囲とその導入効果を尋ね、それらの相関をプロットしたものである。
「業務改善などの効果を得ている」と回答した企業と「期待した効果は得られていない」と回答した企業を比べてみると、「営業/顧客管理系」や「分析/出力系」の活用割合は前者の方が高くなっている。実際の導入例を見てみると、「営業/顧客管理系」では「営業担当が客先で見積を作成する、または在庫を確認した上で発注を受け付ける」といったものが挙げられる。「分析/出力系」では経営層が業績データを確認し、その場で何らかの指示を下すというものがある。いずれも、単に情報を閲覧するだけでなく、スマートデバイスを通じて社内に向けた「発生源入力」を行っているといった特徴がある。
しかし、これだけではノートPCでも代替可能といえなくもない。これに加えるべき点が「スマートデバイスが持つハードウェア面での機能活用」である。例えば、タッチパネルによるわかりやすいインターフェースや優れた携帯性を活かし、工場や倉庫での各種管理業務に活用しようという動きがある。建設業では「現場担当がその日の施工状況をカメラで撮影し、報告データと共に事務所に送り、上司はそれを確認して必要な指示をメールや電話で出す」といった活用例もある。つまり、「入力インターフェース」「携帯性」「カメラ」「通信/通話」といったスマートデバイスが持つ複数の機能や特徴を同時に活かすことで、従来は得られなかった効果を得ているわけだ。
このように「社内向け」のスマートデバイス活用においては「ハードウェア面での複数の機能/特徴を同時に活かした発生源入力」が重要なポイントとなる。「オフィスに戻ってから処理する」が当たり前になっていた業務フローを見直し、「その場で処理できることがもっとあるはずでないか?」という視点で自社のビジネスを見つめ直すことで、これまでになかったスマートデバイス活用法が見いだせる可能性がある。