BYODからBaaSまで--戦略に影響を与えるスマートデバイス - (page 5)

岩上 由高 (ノークリサーチ)

2012-06-15 11:20

個人所有端末の社外向け活用では「各種センサの活用」に注目すべき

 最後に「個人所有の端末を社外向けに活用する」(冒頭の図の右下)場合を考えてみよう。良く見られる例は飲食店などにおける「時限クーポン」の活用だ。だが、以前から従来型の携帯電話に対して類似サービスが提供されており、新たなビジネス機会にはなりづらいのが実情だ。

 「個人所有の端末を社外向けに活用する」という場合、ビジネス上の商品やサービスを提供する主な相手は一般消費者であるケースが多いだろう。すると、「スマートデバイスの特徴を活かし、一般消費者の利便性をいかに向上させるか?」がポイントとなる。そこで注目すべきなのはスマートデバイスが持つ「センサ」である。

 下図の例では高齢者が乗る車椅子にスマートフォンが取り付けられている。転倒事故が起きた場合にはスマートフォンが持つ「加速度センサ」や「傾きセンサ」が転倒を検知し、「GPS」によって取得した現在地と一緒に介護センタに自動的に通知する。こうした仕組みによって、介護センタの担当者が速やかに高齢者を介助することができる。


 このように、従来は利用者側が「電話をかける」「メールをする」といったように自分でアクションを起こさなければいけなかった場面で、スマートデバイスが持つ各種センサによって自動的にアクションが実行される状態を作りだすことができる。特に高齢化が進む将来を踏まえると、こうした自動アクションによるサポートは重要性を増していくと予想される。

 企業側は「スマートデバイスが持つセンサが利用者の状況を把握し、それに応じたアクションを自動実行する」という新たな商品/サービスの消費パターンが登場していることを認識する必要がある。その上で、個人情報やセキュリティ面の担保も考慮しながら、この新しいパターンを活かしたビジネス展開ができないか?を考えていくことになるだろう。

 以上、「社内向け」or「社外向け」と「企業所有」or「個人所有」という2つの軸を元に、スマートデバイスの活用ポイントについて俯瞰してきた。重要なのはスマートデバイスを従来型携帯電話やノートPCの単なる代替ではなく、「新たなビジネス基盤の構成要素」と捉える視点を持つことだ。

 本稿で挙げたいずれの例においても、スマートデバイスからは多くの情報が収集される。それを有効活用するためにはバックエンド側の仕組みも不可欠だ。そこではBaaS(Backend as a Service)といったクラウドの活用も視野に入ってくる。ビジネスやシステムの視点を一旦引き上げ、その上であらためてスマートデバイス活用を見直してみることで、新たなビジネス活用の糸口が見えてくる。本稿がその一助となれば幸いである。

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