三国大洋のスクラップブック

マイクロソフトとアップルの制空権争い - (page 4)

三国大洋 2012年07月03日 09時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 筆者が作成したグラフの一つは、いわゆる「BCG Matrix」をつかったマイクロソフトのビジネスの現況を示すもの。

 そして、もう一つはポストPC時代とBYODの流れが、それらの事業にどう影響を及ぼしつつあり、圧力となっているかを示すものだ。


 この静的な図は、わりと簡単に作ることができた。

 なんといっても目立つのは「金のなる木」に位置する3本柱だ。Windows(Windows+Windows Live)、Office(Microsoft Business)、そして企業や開発者向けの事業(Server and Tools)が右下の枠に固まっている。程度の差は若干あるにせよ、いずれも市場シェアが高く、成長性は低〜中くらいだといえる。

 それに対し、左下の「負け組」には「万年2位」の検索サービス「Bing」を含むオンラインサービス(Online Services)が位置する。これとて戦略的に重要で、どんなに赤字が続いてもやめるわけにはいかない(註8)。

 一方、「問題児」にはモバイル端末(Windows Phoneやタブレット)がくる(事業部という括りはないので括弧付き)。また、まだ機会の窓が開いている=時間との競争とも認識できるだろう。

 そして、なんといっても花形は「Xbox」を中核としたEntertainment and Devices事業だろう。

 次に、ポストPCとBYODの流れを加味した、対アップルでの『制空権』争いのイメージを描きだしてみよう。

アップルとマイクロソフトの制空権争い アップルとマイクロソフトの制空権争い
※クリックで拡大画像を表示

 ご覧のように、タテ軸は「モバイル - 固定(fixed)」、ヨコ軸は「コンシューマ - エンタープライズ」と、それぞれ対抗軸をとっている。とてもざっくりとした図で精度の点では甚だ問題があるが、ここで汲み取っていただけると嬉しいのは以下の2点だ(なお、便宜上、対抗勢力からはアップル以外の各社を除いてある。立体的なダイナミックに動く表現ツールで、しかも簡単に使えるものがあると本当にいいのだが……)。

  • アップルが特にiPhoneとiPadを使って先導する「ポストPC時代」への流れに、「BYOD」の流れが加わると、マイクロソフトの『制空権』がどんどん狭まっていく可能性がある(少なくとも、これまでのように手をこまねいていては)
  • リビングルーム(テレビ)の覇権を握りつつあるメディアコンソールとしての「Xbox」が、まだ『飛び地』になっていると思える点

 思い出してほしいのは、PCがコンシューマーに一挙に浸透するきっかけとなったネット普及期(90年代後半)には、オフィスはすでにPCでロックインされつつあったことだ。しかもアップルはいまのRIMやノキアに劣らぬ「レームダック(死に体)」となっていて、しかもまだグーグルは存在していなかった。

 PCそのものも相対的にまだ高価であったが故に、その空間での占有を梃子にして、家庭での選好に多大な影響を及ぼすことが可能だった。BYODというのは、この「職場から家庭へ」という影響のベクトルに対する逆流と見ることもできる。しかも個々のユーザーにとっていちばん「身近な接点」であるスマートフォン=ポータブルな小型コンピューターが、その流れの牽引役という特異点もある。

 また、2番目の点は次回の中心となる。グーグルの「Nexus 7」投入にもつながってくるとはず……と思える事柄のひとつだが、少なくともこれを「飛び地」にしたままでは、かつてグーグルのエリック・シュミット会長に「マイクロソフトは(略)、コンシューマー分野ではもはや牽引役ではない」と見くびられたような外部からの認識が続くだろう。同時に、スマートフォン分野でAndroid端末やiPhoneを相手にした戦い、そしてタブレットでの「まずは第2位確保」を目指した戦いで、それぞれ正面からの反攻を仕掛けるだけでは不十分となったときも、このリビングルームの拠点——搦め手、もしくは「ブラインドサイド」からの反攻が大きな効果をもたらすのではないか。

 こうした推測の当否を云々できる段階ではまだないのだが、少なくともスティーブ・バルマーCEOが、本気でリビングルームの拠点確保に乗り出していることはほぼ間違いない。

 次回はそれを伝えたForbesの特集記事から興味を惹いた点を紹介していく。

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページTwitterRSSNewsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。

註8:Bingをやめるわけにはいかない

グーグルがOfficeやWindowsに攻撃を仕掛けていることへの「抑止力」、またフェイスブックへの投資を通じた影響力の維持にも、そうした性格があったはずだ。このことについては、ついにフェイスブックのiOS/Mac OSへのディープインテグレーションが決まったことから不透明感が増している印象を受ける。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]