筆者が作成したグラフの一つは、いわゆる「BCG Matrix」をつかったマイクロソフトのビジネスの現況を示すもの。
そして、もう一つはポストPC時代とBYODの流れが、それらの事業にどう影響を及ぼしつつあり、圧力となっているかを示すものだ。
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この静的な図は、わりと簡単に作ることができた。
なんといっても目立つのは「金のなる木」に位置する3本柱だ。Windows(Windows+Windows Live)、Office(Microsoft Business)、そして企業や開発者向けの事業(Server and Tools)が右下の枠に固まっている。程度の差は若干あるにせよ、いずれも市場シェアが高く、成長性は低〜中くらいだといえる。
それに対し、左下の「負け組」には「万年2位」の検索サービス「Bing」を含むオンラインサービス(Online Services)が位置する。これとて戦略的に重要で、どんなに赤字が続いてもやめるわけにはいかない(註8)。
一方、「問題児」にはモバイル端末(Windows Phoneやタブレット)がくる(事業部という括りはないので括弧付き)。また、まだ機会の窓が開いている=時間との競争とも認識できるだろう。
そして、なんといっても花形は「Xbox」を中核としたEntertainment and Devices事業だろう。
次に、ポストPCとBYODの流れを加味した、対アップルでの『制空権』争いのイメージを描きだしてみよう。
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ご覧のように、タテ軸は「モバイル - 固定(fixed)」、ヨコ軸は「コンシューマ - エンタープライズ」と、それぞれ対抗軸をとっている。とてもざっくりとした図で精度の点では甚だ問題があるが、ここで汲み取っていただけると嬉しいのは以下の2点だ(なお、便宜上、対抗勢力からはアップル以外の各社を除いてある。立体的なダイナミックに動く表現ツールで、しかも簡単に使えるものがあると本当にいいのだが……)。
- アップルが特にiPhoneとiPadを使って先導する「ポストPC時代」への流れに、「BYOD」の流れが加わると、マイクロソフトの『制空権』がどんどん狭まっていく可能性がある(少なくとも、これまでのように手をこまねいていては)
- リビングルーム(テレビ)の覇権を握りつつあるメディアコンソールとしての「Xbox」が、まだ『飛び地』になっていると思える点
思い出してほしいのは、PCがコンシューマーに一挙に浸透するきっかけとなったネット普及期(90年代後半)には、オフィスはすでにPCでロックインされつつあったことだ。しかもアップルはいまのRIMやノキアに劣らぬ「レームダック(死に体)」となっていて、しかもまだグーグルは存在していなかった。
PCそのものも相対的にまだ高価であったが故に、その空間での占有を梃子にして、家庭での選好に多大な影響を及ぼすことが可能だった。BYODというのは、この「職場から家庭へ」という影響のベクトルに対する逆流と見ることもできる。しかも個々のユーザーにとっていちばん「身近な接点」であるスマートフォン=ポータブルな小型コンピューターが、その流れの牽引役という特異点もある。
また、2番目の点は次回の中心となる。グーグルの「Nexus 7」投入にもつながってくるとはず……と思える事柄のひとつだが、少なくともこれを「飛び地」にしたままでは、かつてグーグルのエリック・シュミット会長に「マイクロソフトは(略)、コンシューマー分野ではもはや牽引役ではない」と見くびられたような外部からの認識が続くだろう。同時に、スマートフォン分野でAndroid端末やiPhoneを相手にした戦い、そしてタブレットでの「まずは第2位確保」を目指した戦いで、それぞれ正面からの反攻を仕掛けるだけでは不十分となったときも、このリビングルームの拠点——搦め手、もしくは「ブラインドサイド」からの反攻が大きな効果をもたらすのではないか。
こうした推測の当否を云々できる段階ではまだないのだが、少なくともスティーブ・バルマーCEOが、本気でリビングルームの拠点確保に乗り出していることはほぼ間違いない。
次回はそれを伝えたForbesの特集記事から興味を惹いた点を紹介していく。
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註8:Bingをやめるわけにはいかない
グーグルがOfficeやWindowsに攻撃を仕掛けていることへの「抑止力」、またフェイスブックへの投資を通じた影響力の維持にも、そうした性格があったはずだ。このことについては、ついにフェイスブックのiOS/Mac OSへのディープインテグレーションが決まったことから不透明感が増している印象を受ける。