2011年度に過去最大の最終赤字に陥ったパナソニック、ソニー、シャープ。新年度から新社長体制で事業を再スタートしているのも、この3社の共通点である。
その3社の新経営トップが株主総会と新社長会見を通じて異口同音に放った驚くべき発言がある。「テレビ事業はもはやコア事業ではない」という発言だ。
パナソニックの津賀一宏社長
パナソニックの津賀一宏社長は、「テレビ事業は売り上げが立っても利益が出ない。これはコア事業ではない」と断言。ソニーの平井一夫社長は、テレビ事業に関しては「収益改善計画と並行して商品力を強化。確実に収益につなげることを最優先にする」と語る一方、「デジタルイメージング、ゲーム、モバイルを重点事業として強化する」として、テレビ以外のこれらの事業をコア事業に位置づけた。この3分野に開発投資の7割を割く姿勢を示している。
また、シャープの奥田隆司社長は、「赤字の大半は大型液晶事業に起因するものである。これを本体から切り出し、経営の安定化を図る」と、テレビ向け大型液晶の事業再編に乗り出すことを示した。
これまでテレビ事業を成長の「源泉」、あるいは「顔」として捉えていた国内電機大手が、一転してテレビ事業の位置づけを変えた。
技術よりもデザインやマーケティング
事実、3社の2011年度の大幅赤字の元凶は、いずれもテレビ事業の不振だ。
国内では、2011年7月以降の地デジ完全移行に伴い、テレビ需要が一気に停滞。また、欧州の金融危機や米国の景気低迷、新興国の需要の減速に加えて、世界のテレビ市場で激しく競争を繰り広げる韓国勢がウォン安を追い風にする一方、日本のメーカーは円高という逆風にさらされ、国際競争力に大きく影響した点も見逃せない。
シャープの奥田隆司社長
シャープの奥田社長は、「リーマンショック以降、円は4割上昇し、ウォンは2割下がった。グローバル市場において、韓国とは60〜70%の差がついている。少しばかりの技術の差では埋められなくなった」と語る。
一方でパナソニックの津賀社長は、テレビ事業が低迷した理由をこんなふうに語る。
「パナソニックはデジタル市場の大きな転換期において、新たなインフラを立ち上げ、リードすることに一生懸命取り組んできた。先頭を走った結果、自らデバイスを開発し、フォーマットをつくり、それを普及させなくてはならない立場にあった。重いしがらみのなかでデジタル化を推進してきたが、それが重要とされるフェーズであった2005年までは負けてはいなかった。しかし、それが一段落して端末競争になってくると、技術よりもデザインやマーケティングが重要になってくる。そのフェーズにおいて、パナソニックは技術やモノづくりに自信を持っていたために、お客様視点での商品づくりが十分にできなかった。そして、商品そのものに対する日本のテイストと、グローバルのテイストが違うことも影響した。これが、2006〜2011年であった」
グローバル競争において、手の打ち方に反省があったことを自ら指摘する。
さらに、大規模な生産設備への投資計画が過剰投資へとつながり、そこにリーマンショックという世界規模での景気後退が追い打ちをかけたことも大きく影響した。
こうした反省が、今回各社が打ち出したテレビ事業の再編に生かされているといえよう。
そして、各社がテレビ事業の再編で重視しているのが、実は「非テレビ事業」である。