1インチ1000円以下まで下がったパネル価格
パナソニックの津賀社長は、「テレビは住宅空間が対象になるが、テレビをデバイスとしてばらした場合、ディスプレイは住宅空間だけでなく非住宅空間、モビリティ、パーソナルといったすべての空間での活用が可能。テレビという言葉、ディスプレイという言葉は分けて考えることが大切」とし、「パネルは非テレビ用途への転換を図っており、それには手応えを感じている」と語る。
パナソニックでは、2011年度にはプラズマディスプレイパネルでは数パーセント、液晶パネルではゼロだった非テレビ用途向け比率を、2012年度にはそれぞれ20%と50%へ一気に引き上げる。特に後者の液晶パネルはゼロから50%へと、まさに方針の大転換である。
シャープでも、堺工場で生産する大型液晶パネルについては鴻海グループが数量の半分を引き取る一方、シャープでは60型以上のテレビ用途に加えて、60型と70型においてデジタルサイネージ市場向けに展開する方針を打ち出している。
ある関係者からは「1インチ1000円以下にまで下がったパネル価格を、1インチ1万円に引き戻すことができるのが非テレビ事業」という声もあがっている。
非テレビ事業では、案件ごとのカスタマイズも発生し、その点でも収益性の高いビジネスモデルへと転換を図ることができるのだ。
しかし、非テレビ事業へのシフトを加速し、テレビ事業をコア事業としなくなった国内電機各社のテレビ戦略がどうなるのかが気になる。
韓国勢はさらにテレビ事業を加速させる姿勢を示しており、有機ELテレビでも、日本勢を尻目にひと足早く年内に製品化を図る。パナソニックとソニーは有機ELパネルの開発で共同歩調を取り、シャープも中小型液晶領域にフォーカスして有機ELパネルの開発に取り組んでいるが、各社ともテレビの商品化においては慎重な姿勢を崩さない。
「有機ELテレビが今のテレビの価格に近いところになるには、相当な時間がかかる。2014年なのか2015年なのかはわからない。サンプルは作れるが、テレビとは無縁の商品になる」(パナソニック 津賀社長)と長期的視点で取り組む考えであり、韓国勢とは対照的だ。
そして韓国勢は、これまでは難攻不落だった日本市場に向けての本格参入の準備にも余念がない。