IDC Japanは7月5日、国内ITサービス市場予測を発表した。2012年の同市場は前年比1.6%増の4兆9238億円になる見込み。4年ぶりのプラス成長になる。2011~2016年の年平均成長率(CAGR)は1.7%で、2016年の市場規模は5兆2871億円になると予測している。
2008年のリーマンショック後の景気後退、2011年の東日本大震災やタイでの洪水、急激な円高などから国内企業は、ITサービス支出を抑制してきた。
その範囲は、企業の成長を支える新規戦略投資の中止や延期はもちろん、既存のITアウトソーシングや保守サービス契約の値下げ要求、委託範囲の見直しまで広く及んでいる。この間、国内企業の海外進出に伴うITの支出先の海外シフト、クラウド利用での低価格サービスの利用拡大などが起き、国内ITサービス市場の成長を阻害要因となっている。
2011年後半には、製造業を中心にITサービス支出の回復が見られるようになっていると分析する。中心となったのは、システム更改案件の再開やインフラの最適化、事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)に対する投資だ。
2012年に入っても、この傾向は継続しており、国内ITサービス支出は4年ぶりのプラス成長になると見込んでいる。ただ、この支出回復は過去3年のマイナス成長からの反動という側面が強く、企業が新たな戦略投資を国内向けに増やしているとは言い難い状況にあると分析している。

欧州債務危機などから国内の景況感は悪化傾向にあり、2012年後半には回復は鈍化するとし、2013年以降も1%台後半の低い成長にとどまるとみている。クラウドのような低価格なソリューションの利用拡大、IT支出の海外シフトの加速といった傾向が強まっていくためと考えている。2016年の市場規模を5兆2871億円と予測しているが、これでリーマンショック以前の規模に回復することになる。
IDC Japanは同市場の低成長が続く中で、サービスベンダー各社は積極的に案件を発掘し、ビジネスの成長に結び付けることで自らの成長に結び付けることが求められると主張する。
同社の寄藤幸治氏(ITサービス/コミュニケーションズグループディレクター)は「顧客との関係を見直し、ITコストの削減や効率化だけでなく、顧客の潜在的な経営課題、例えば新規ビジネス開発や新規顧客獲得などのビジネス創造に関係する課題を発掘し、クラウドやモビリティなどITを通じて、その解決を実践していくべき」と提言している。