本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。今週は、日本オラクル 遠藤隆雄 代表執行役社長と、NEC 福井雅輝 執行役員常務のいずれも会見での言葉を紹介する。(ZDNet Japan編集部)
「売れ行き好調なExadataが、他のソリューションの売れ行きにも大きな影響を与えて、当社のビジネス全体を牽引している」
(日本オラクル 遠藤隆雄 代表執行役社長)
日本オラクルが6月26日、2012年5月期の決算を発表した。遠藤氏の発言は、その発表会見で、ハードウェアとソフトウェアを一体化した「エンジニアド・システム」として、いま同社が最も注力している「Oracle Exadata Database Machine」について語ったものである。
日本オラクル 遠藤隆雄 代表執行役社長
同社の2012年5月期決算は、売上高1429億1900万円(前年同期比7.7%増)、営業利益404億3200万円(同8.7%増)、経常利益404億8000万円(同8.5%増)、当期純利益237億900万円(同7.4%増)と、いずれも過去最高を記録した。
遠藤氏はこうした好業績について、「昨年策定した中期経営計画の初年度として、順調に前進し始めることができた。中期計画では終了年度である2014年5月期までのCAGR(複合年間成長率)として、売上高12%、営業利益10%を目指しているが、修正することなく突き進んでいきたい」と力を込めて語った。
さらに、「オラクルは今、エンジニアド・システムをはじめとして競合製品を圧倒した革新的な製品やサービスを次々と投入しており、お客様から高い評価を得ている。さらにオラクルが運営するクラウドサービスであるOracle Cloudもいよいよスタートし、ソリューション領域が一層広がっていく。そうした幅広いソリューションによって、お客様のイノベーションと企業価値向上にしっかりと貢献していきたい」と、今後の意気込みを示した。
会見の中で最も話題に上ったのは、売れ行き好調のExadataに関する動きだ。遠藤氏によると、「Exadataは今やすべての産業分野で利用されており、2012年5月期は台数ベースで倍増させることができた。2013年5月期もその勢いで同様に倍増させたい」と、さらなる攻勢に打って出る構えだ。
そうした流れの中で出てきたのが、冒頭の発言である。遠藤氏の解説によると、「Exadataがきっかけとなって、これまでデータベースのコアな部分でしか付き合いがなかったお客様に、他のソリューションもどんどん提案できるようになった。そうした相乗効果から、Exadataがビジネス全体をけん引する構図ができ上がってきている」のだとか。
ただ、そんな活況な話の一方で、2012年5月期の決算内容をみて気になったのは、ERPなどのアプリケーション事業が前年同期比1.2%減と苦戦していることだ。この傾向はグローバルでも同様のようだ。おそらく抜本的なテコ入れが行われるのではないか。
その伏線が、日本法人に1週間ほど先駆けて発表された米Oracleの2012年5月期決算でのラリー・エリソンCEOのコメントに見て取れた。
「Oracle CloudはOracleのソフトウェア事業拡大と収益向上を目的とした戦略だ。中でもSaaS事業の年間収益は、エンジニアド・システム事業とほぼ同じになると見込んでいる」