「我々は、IBMが進めているベンダー都合の垂直統合システムではなく、横断型のピースを提供し、そこにユーザーのサービスを載せてもらう水平統合型の戦略を志向している」——
米Citrix Systems社長 兼 最高経営責任者(CEO)のMark Templeton氏は、「Citrix iForum 2012 Japan」のために来日し、会見でこう訴えた。企業向けにクラウド環境や仮想サーバ、仮想デスクトップなどを提供する同社は、「セキュアで、ガバナンスに則った形態でありながら、どこでも仕事ができる環境を提供していく」ことを目指している。そしてあくまでも「水平型」にこだわってソリューションを提供していくという。
来日したTempleton氏は、飛行機に積み込んだ荷物がなくなるというトラブルに見舞われた。荷物の中には仕事で利用するパソコンも入っていたそうだが、「暗号化している上、Citrixのテクノロジーによってデータをロックすることができる。暗号は破られることもあるが、パソコンをロックすることでビジネスデータの流出は避けることができる」と笑顔で話す。
日頃使っているパソコンが手元になくても、Citrixのソリューションによってすぐに仕事を再開できる環境を整えられることも幸いしたそうで、「パソコンに関しては大きな不便は感じていない」という。
はからずも、「どこでも、どんなデバイスでも仕事ができる環境を提供していくのが当社のビジョン」ということばを体現している。

米Citrix Systems社長 兼 CEOのマーク・テンプルトン氏
最近、元々はハードウェアベンダーだったIBMがソフトウェア企業を積極的に買収し、ハードからソフト、サービスまでを提供する体制を整えたほか、ソフトウェアベンダーだったオラクルがハードメーカーを買収。やはり全方位でシステムを提供できる体制を整えた。IT業界が様々なベンダーの製品の中からベストなものをチョイスする水平分業型から、1社の製品で上から下まで揃える垂直統合型へとシフトする方向にある中、Citrixが目指す方向はどちらなのか。
「これは一般論だが、垂直統合型のクローズドシステムは、他社に付加価値をつける余地は与えられない。あくまでもエンドカスタマー向けのもので、拡張性ということを目論んだものではない。一方、顧客に独自のユニークなソリューションを提供する場合、オープンスタンダードな技術を利用することで、カスタム化など第三者が関わる余地をもつ。ただ、どちらの場合も不連続的なイノベーションが起こることで、破壊されるというのも真実だ。我々は、横断的なピースを提供し、その上に第三者にサービスを載せてもらう戦略をとっている。垂直統合ではなく、水平統合型の戦略ということになる」
Citrixはデスクトップ仮想化などのソリューションにより、セキュリティを担保しながら私物デバイスを仕事に利用するBYO(Bring Your Own)の実現を強みとしているが、「BYOといっても今後は二つのセグメントに分かれていくだろう」と分析する。