その背景には、これまで何度か触れてきた「ポストPC時代」の進展——あるいはメアリー・ミーカーのいう「モバイル+ソーシャル」への大きな流れがある。
そして主たる脅威は、やはりアップルの動きだろう。
スマートフォン分野ではAndroid OSの市場シェアがほぼ過半数を占めていることから、グーグルの「制空権」維持はとくに問題なさそうだ。
ただし、さらに一歩進んでモバイル広告の収益強化となると、それほど安穏と構えてはいられなくなる(註6)。
タブレット内蔵ブラウザからの検索で表示される広告が「はたしてPC向けか、それともモバイル向けなのか」という部分はよくわからない。それでも、すでにiPadが四半期ごとに1000万台以上も売れつづけ、タブレット市場では6割を超えるシェアを維持し続けていること、そしてPCの相対的な影響力低下(台数増加の伸び悩み)を考えると、これはグーグルの検索事業にとっていやな流れであることはほぼ間違いない。
さらに、アップルが昨年秋の「Siri」の投入を手始めに、それ以降かなりあからさまに進めている「グーグル外し」は周知の通りだ。次の「iOS 6」ではGoogle Mapsが外され、代わりにSiriと連動するアップル自前の地図技術=イェルプ(Yelp)などのサードパーティーのサービスを取り込んだローカル検索機能がすでに6月のWWDCで発表されている。これはグーグルの「金の卵を生むガチョウ」を切り刻む「肉切り包丁」と化すかもしれない。(次ページ「グーグルがアップルに仕掛けた「無力化」「非武装化」」)
註6:モバイルでは安穏と構えていられないグーグル
グーグルの2011年度の売上は378.6億ドルで約95%が広告収入だ。ただし、モバイル広告はまだ1割前後。PCブラウザ向けに比べてモバイル広告の単価が安いという難点を挙げる声もあり、また「グーグルのモバイル関連収入の大半は、これまでiPhoneやiPadからのものだった」というAsymcoのホレス・デディウのコメントもある。
Mobile researcher Horace Dediu recently estimated that Google generates around $2 in revenue per Android device per year and that the vast majority of mobile revenue comes from ad sales on Apple devices.
さらに、モバイル分野でのグーグルのアップル依存を例証するような次の指摘も。
マッコリー(Macquarie)のアナリスト、ベン・シャクター(Ben Schacter)氏は、iOS向けChrome登場の根拠として、グーグルがアップルに支払っている検索広告関連の手数料のマージンを挙げている。アップルは現在、iOS製品のデフォルトブラウザである「Safari」にグーグルの検索枠を設けることで、そこから発生した売上の5〜6割を得ているという。すなわち、Safariの検索ボックス経由で10億ドルの広告収入が発生しても、グーグルの手元に残るのは4億ドル程度となる。そのため、iOS版Chromeのリリースにより、iOS端末で99%のシェアを誇るSafariからシェアを奪うことができれば、グーグルは利益向上を見込めることになるという。