三国大洋のスクラップブック

プラットフォームの覇権争い:ピボットするグーグル - (page 2)

三国大洋

2012-07-19 16:35

 その背景には、これまで何度か触れてきた「ポストPC時代」の進展——あるいはメアリー・ミーカーのいう「モバイル+ソーシャル」への大きな流れがある。

 そして主たる脅威は、やはりアップルの動きだろう。

 スマートフォン分野ではAndroid OSの市場シェアがほぼ過半数を占めていることから、グーグルの「制空権」維持はとくに問題なさそうだ。

4〜6月期の北米市場OS別シェア(データ出典:ニールセン、グラフ:Asymco) 4〜6月期の北米市場OS別シェア(データ出典:ニールセン、グラフ:Asymco
※クリックで拡大画像を表示

 ただし、さらに一歩進んでモバイル広告の収益強化となると、それほど安穏と構えてはいられなくなる(註6)。

 タブレット内蔵ブラウザからの検索で表示される広告が「はたしてPC向けか、それともモバイル向けなのか」という部分はよくわからない。それでも、すでにiPadが四半期ごとに1000万台以上も売れつづけ、タブレット市場では6割を超えるシェアを維持し続けていること、そしてPCの相対的な影響力低下(台数増加の伸び悩み)を考えると、これはグーグルの検索事業にとっていやな流れであることはほぼ間違いない。

1〜3月期の世界PC出荷台数(iPadを含む)(出典:Asymco) 1〜3月期の世界PC出荷台数(iPadを含む)(出典:Asymco
※クリックで拡大画像を表示

 さらに、アップルが昨年秋の「Siri」の投入を手始めに、それ以降かなりあからさまに進めている「グーグル外し」は周知の通りだ。次の「iOS 6」ではGoogle Mapsが外され、代わりにSiriと連動するアップル自前の地図技術=イェルプ(Yelp)などのサードパーティーのサービスを取り込んだローカル検索機能がすでに6月のWWDCで発表されている。これはグーグルの「金の卵を生むガチョウ」を切り刻む「肉切り包丁」と化すかもしれない。(次ページ「グーグルがアップルに仕掛けた「無力化」「非武装化」」)

註6:モバイルでは安穏と構えていられないグーグル

グーグルの2011年度の売上は378.6億ドルで約95%が広告収入だ。ただし、モバイル広告はまだ1割前後。PCブラウザ向けに比べてモバイル広告の単価が安いという難点を挙げる声もあり、また「グーグルのモバイル関連収入の大半は、これまでiPhoneやiPadからのものだった」というAsymcoのホレス・デディウのコメントもある。

Mobile researcher Horace Dediu recently estimated that Google generates around $2 in revenue per Android device per year and that the vast majority of mobile revenue comes from ad sales on Apple devices.

Google Shifts Tack on Android

さらに、モバイル分野でのグーグルのアップル依存を例証するような次の指摘も。

マッコリー(Macquarie)のアナリスト、ベン・シャクター(Ben Schacter)氏は、iOS向けChrome登場の根拠として、グーグルがアップルに支払っている検索広告関連の手数料のマージンを挙げている。アップルは現在、iOS製品のデフォルトブラウザである「Safari」にグーグルの検索枠を設けることで、そこから発生した売上の5〜6割を得ているという。すなわち、Safariの検索ボックス経由で10億ドルの広告収入が発生しても、グーグルの手元に残るのは4億ドル程度となる。そのため、iOS版Chromeのリリースにより、iOS端末で99%のシェアを誇るSafariからシェアを奪うことができれば、グーグルは利益向上を見込めることになるという。

「グーグルがiOS向けのChromeブラウザ投入へ」 - 米アナリスト予想

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]