データを情報に変え、使いこなしてこそ成長につながる--米SASの戦略

大川淳 2012年07月20日 20時05分

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 SAS Institute Japanは、東京・港区内で同社の戦略や最新技術を紹介する「SAS Executive Briefing」を開催した。

 米SAS Institute最高経営責任者(CEO)のJim Goodnight氏や、最高マーケティング責任者(CMO)のJim Davis氏ら、同社幹部が講演。ビッグデータの重要性や意義、活用の方法などを説くとともに、新たな時代に向けて企業は何をすべきかを説明した。

変化の速度は待ってくれない

SAS Institute Japanの吉田仁志社長
SAS Institute Japanの吉田仁志社長

 SAS Institute Japan代表取締役社長の吉田仁志氏は、「データの効率的な利用と分析の重要性などが叫ばれ、その結果、“見える化”の整備が一巡したが、“見える化”してもさして状況は変わらなかったとの声も聞かれる。しかし、重要なのはデータを情報に変えなければならないということだ。ビッグデータは、いかに適時に分析し、洞察力に変換するかが鍵になる」と述べ、ただ単に膨大なデータがあるだけでは意味がないとする。

 米SAS Institute InstituteでEMEA(欧州、中東、アフリカ地域)とAP(アジア太平洋地域)を担当するゼネラルマネージャーのShekhar Iyer氏は、時代の変化を注視すべきだと話す。

Shekhar Iyer氏
Shekhar Iyer氏

 「およそ20年で、インターネットが進化し、電子商取引などが台頭し、ビジネスは大きく変貌した。ここ数年では、クラウド、モバイル、SNSの進展によってさらに急激に変化している。これら3つの大きな要因によってビッグデータが生成され、今、新しい時代への転換点を迎えている」とし、これまでにない潮流への対応に後れを取ることの危険性に言及。「今はリーダーであっても、躊躇しているとその座から転落することもある。変化の速度は待ってくれない」と話し、ビッグデータへの取り組みと迅速な行動が必須であると主張した。

未来を予見するための分析が必要

SAS Instituteのジム・デイビスCMO
SAS Instituteのジム・デイビスCMO

 米SAS Instituteのシニアバイスプレジデント 兼 最高マーケテイング責任者(CMO)であるJim Davis氏は、データに対するさまざまな要求が変化および複雑化しているとともに、レスポンス速度をいっそう高くしてほしいとの要望が強くなっていることを紹介。「データ分析は、データを限られた人にだけ渡してモデル化し、全体の概略を示すというようなものではなくなってきており、BI(ビジネスインテリジェンス)を超えたものになっている。従来のBIとBA(ビジネス分析)の間には違いがある」とする。

 「アナリティクスは誰もが既に実行しているといわれるが、実際にはどうか」と、Davis氏は疑問を投げかける。「アナリティクスには二つの側面がある。一方は、何らかの閾値を設け、そこに達するとアラートを告げたり、OLAP、非定型および定型のレポートといったものであり、BIに属する。他方、最適化を行い、予測モデリングを作成して、予測したり統計分析することで、データの本質を考えて未来を予見する。これがBAであり、こちらが重要になる」(Davis氏)

 「データの処理時間を数日から数秒にできないのか」などと、いっそうの高速化が求められている。「これを可能にするのは、データ、アナリティックス、そして適切なプラットフォーム」(Davis氏)だ。構造化と非構造化を問わず、SNSのデータなども含め、データというものは「もはやOSの副産物ではなく、顧客、製品、施設と同じくらい重要な資産になっている。これらをうまく活用することが肝要だ」と強調した。

アナリティクスを実現する新たなプラットフォーム

 「ビッグデータ」を定義するのは困難だが、これまでのデータベースの能力を超越しているものだといえる。これらを、サンプリングという過程を省いてそのまま扱い、巨大なデータでも数秒で処理できる能力が必要になる。

 「そこで今、我々が提供しようとしているのは、きわめて革新的なものだ」(同)とDavis氏。SAS Instituteのビッグデータ分析ソリューション「SAS High-Performance Analytics」は、プラットフォームとして、こうした先進的分析が可能になるとする。

 「当社のコアコンピタンスは、予測を可能にする分析技術だ。High-Performance Analyticsは、まったく新しい分析を実現する。インメモリのプラットフォームであり、他のベンダーとは異なり、インメモリデータべースではない。従来のディスクベースの処理ではなく、拡張性の高い分散型のインメモリ処理向けに最適化されているため、新しいシナリオや複雑な分析計算の実行要求にも極めて短時間で対処することが可能だ。処理時間を劇的に減少させており、単なるレポート機能を超えたものを提供。モバイル環境にも対応している。ビッグデータを視覚的に瞬時に探索することができ、ビジネスをこれまでとは異なった視点で見ることが可能になる」(Davis氏)

 SAS Instituteの最高経営責任者(CEO)Jim Goodnight氏は、High-Performance Analyticsの威力を説明した。

SAS Instituteのジム・グッドナイトCEO
SAS Instituteのジム・グッドナイトCEO

 「金融機関は従来、計算に時間がかかりすぎていた。ある金融機関は、リスク分析にあたって、2〜3年分のさまざまな要素を取り出し、マトリックスを作るといった演算を10万回も行い、帳簿と照合して債券市場の状況や価格を考慮し、分析していた。これらの作業には18時間を要していた。これを短縮化できないかとの要請を受けた。この処理には200兆以上のインストラクションが必要であり、並列処理によって解決した。処理時間は18時間から15分になった。その秘訣は、ブレードサーバにあった。IntelのSandy Bridgeを利用することで、チップ一つを8台の本格的コンピュータに見立てたのだ。アナリティクスのための最適な環境としては、最低限で8ブレードが推奨されると考えているのだが、フルラックで48ブレードとなると、1536プロセッサを同時実行できる。メモリは6.1テラバイト以上で、57テラバイトのディスクを使える。新たなメモリチップが登場すれば、30テラバイトのメモリを使えるようになり、メモリ上ですべてのデータを扱って分析できるようになる」として、インメモリで高度な分析が可能なツールをブレードサーバで稼働させる手法を積極的に活用すべきだと主張した。

ビッグデータは新時代の石油になる

Mikael Hagstrom氏
Mikael Hagstrom氏

 米SAS InstituteでEMEAおよびAPを担当するエグゼクティブバイスプレジデントのMikael Hagstrom氏は、「大規模な自然災害が起きたり、欧州の経済状況が厳しくなるなど、企業を取り巻く環境は厳しくなっている。これらの多様な圧力を考えると、複雑化は進行するばかりだ。しかし、これらの課題への対応に有用な要素がある。一つはビッグデータで、次にハイパーコネクティビティだ。多様な情報機器とSNSなどにより、あらゆるものがネットワークに接続される状況では、ITで生成されるデータの爆発的増大により、それらの累積の90%はこの2年間に発生している。つまり、現時点で策定されているIT戦略は、データ全体の9割を考慮に入れていないようなものが圧倒的に多いことになる。これは大きな問題だ」と述べる。

 続けて、「非構造化データの伸長は相当なものであり、組織内部の構造化データと外部の非構造化データを組み合わせると、競合相手は知りえない商品の指向傾向、見えにくい顧客動向などの成長につなげられる情報を発見できる」として、「ビッグデータは、新たな時代の石油になるとの見解がある。これは、ただデータを持っていることが有効なのではなく、データを使うことがこそ要となる。そうだとすれば、High-Performance Analyticsは、新しい世代の経済を活性化させる原動力となる」と述べた。

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