Microsoft WPC 2012

マイクロソフトのパートナービジネスが持つ地力

怒賀新也 (編集部) 2012年07月24日 14時27分

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 Microsoftがカナダのオンタリオ州、トロントで開催した「Worldwide Partner Conference 2012」(WPC)には、世界中から過去最高の1万6000人が参加した。何らの形でMicrosoft製品を扱っている意味では参加者は運命共同体ともいえる。初日に、注目が集まっていたWindows 8の発売日やOfficeの新販売形態である「Office 365 Open」を発表するといったサプライズもあり、イベント全体が一体感で包まれた。

 実際に、Microsoftとパートナーシップを結ぶ理由は何か。WPCに参加したパートナー企業や日本マイクロソフトの関係者に話を聞くと、パートナービジネスの地力の強さが見えてくる。

WPCには世界中から1万6000人のパートナーが集まった。各国のアワード受賞者が2日目のキーノートの壇上に上った
WPCには世界中から1万6000人のパートナーが集まった。各国のアワード受賞者が2日目のキーノートの壇上に上った

 2日目のキーノートで、各国から1社、マイクロソフト製品を基盤にソリューションやサービスを提供するパートナーを表彰するアワード「Microsoft Country Partner of the Year」を受賞した企業が、1万6000人が見守るホールのステージに各国の国旗を持って上がった。 アワードの受賞効果について、パートナーからは「ぜひ取りたい」「最終選考に漏れて非常に残念だった」「効果はそれほど明確ではないかもしれない」といった声がある中、Microsoftは「社員の士気が上がる。株価が上昇することもある」とする。

 今回、各国から1社が選出されるMicrosoft Country Partner of the Yearを受賞した日本企業は大塚商会だ。大塚商会は「日本版」での受賞実績は多いが、世界の舞台で表彰されたのはこれが初という。最終選考には、旭エレクトロニクス、ダイワボウ情報システム、アクセンチュア/アバナード、サードウェーブ、マウスコンピューター、CSKWinテクノロジ、YCC情報システム、富士通が残った。

富士通の大島氏(右)と松下氏。同社は、子会社や関連会社を含め17万人を対象に、Microsoftの製品を利用したコミュニケーション基盤を構築する
富士通の大島氏(右)と松下氏。同社は、子会社や関連会社を含め17万人を対象に、Microsoftの製品を利用したコミュニケーション基盤を構築する

 富士通は既に、国内外の子会社や関連会社を含め17万人を対象に、Microsoftの製品を利用したコミュニケーション基盤を構築すると発表。クラウド上に共通基盤を構築してグループ内のコミュニケーションを円滑にすることに加え、自ら利用することで、Exchange ServerやLyncといった製品のノウハウを蓄積する狙いもある。

 同社でアライアンスを担当する松下香織氏は「グローバリゼーションの進展で、日本企業が世界に出て行ってしまう時代になり、顧客を追いかけなくてはいけなくなっている」と話す。マーケティング本部のソリューション推進統括部長を務める大島昭氏は「Microsoftとグローバルかつ、(PCから携帯電話、サーバなど)フルラインで協業しているIT企業はあまりない」と話した。

元MS社長を迎えパートナービジネスを強化するSBT

 ソフトバンク子会社で、もともとソフトバンク本社向けにExchange Serverを導入していたソフトバンクテクノロジー(SBT)は、最終選考には漏れたものの、日本マイクロソフトとの関係を強化中だ。

SBTの興梠氏(左)と「アワードの最終選考に残れずに残念だった」と話した淡海氏。
SBTの興梠氏(左)と「アワードの最終選考に残れずに残念だった」と話した淡海氏。

 SBTは、2000年から3年あまりにわたり日本マイクロソフトの社長を務め、その後ソフトバンクで最高情報責任者(CIO)を歴任した阿多親市氏を2012年6月に社長に迎えた。マイクロソフト元社長の就任からも想像できる通り、SBTは日本マイクロソフトとのパートナービジネス重視の戦略へと舵を切ったという。

 WPCに参加した、SBTのクラウドソリューション事業部エンタープライズ営業統括部第3営業部長の興梠陽介氏によれば、阿多社長自ら「マイクロソフトとのビジネスをもっと伸ばせ」と発破を掛けている。7月には、技術者400人を含む日本マイクロソフト向けビジネスの専門部隊(7月からMS専門の部隊)を組織した。様々な経験を持つ社員が集められ「売り上げを2倍の規模に増やす」考えだ。

 特に、Officeをクラウドで提供する「Office 365」のビジネスを伸ばすという。具体的には、Office 365のセキュリティを担保するソフトウェア「Online Service Gate」を自社開発し、Office 365のアカウントと併せたソリューションとしてエンドユーザーに提供する。このほか、Windows ServerやActive Directoryの構築などにも注力する。

日本マイクロソフトのエバンジェリスト、西脇資哲氏
日本マイクロソフトのエバンジェリスト、西脇資哲氏

 システムインテグレーターにとってクラウドビジネスは評価が難しい。「システムの作り込みを伴うシステムインテグレーションの方が利益が出しやすい」一方で、世の中の流れがクラウドへ向かっているのも事実。SBTの同事業部ソリューション技術統括部の淡海功二統括部長は「顧客のクラウド志向は強いこともあり、結論としてSBTはクラウドを推進する方針を固めている」と話している。

 日本マイクロソフトのパートナービジネスについて、同社のエバンジェリストでWPC最終日に日本のパートナー向けに講演した西脇資哲氏は「WPCで多数のパートナーが参加し、さまざまな言語が飛び交うことに力強さを感じた」と話していた。

パートナー同士が自主的な活動を開始

セカンドファクトリーの大関社長
セカンドファクトリーの大関社長

 さらに、パートナー同士が組み、自主的な活動もしているようだ。ビジネスの観点からユーザーインターフェースの最適化を進める「UX」を手がけるセカンドファクトリーの大関興治社長によると、WPCに参加した日本マイクロソフトのパートナー企業が集まり、コミュニティが出来上がっているという。既に「Metro×Azureビジネステクノロジー」(仮称)というイベントを実施した。

 「パートナー同士でビジネスを補完しあう意図がある。顧客を“クロス”させる狙いもある」(同氏)

 大関氏によれば「技術のトレンドは、従来のような個別システムをつくり込む方法から、さまざまなものを組み合わせて1つのシステムを仕上げる」といういわゆるアグリゲーションの手法に変わりつつあるという。そのため、さまざまな企業との連携がシステム構築の基盤になると考えられる。

最終日の懇親会に出席した樋口社長。普段よりもカジュアルな服装で、長い列をつくったパートナーの名刺交換の列に丁寧に対応していた
最終日の懇親会に出席した樋口社長。普段よりもカジュアルな服装で、長い列をつくったパートナーの名刺交換の列に丁寧に対応していた

 結果として、Microsoftに限らず、パートナーを経由したビジネスの重要性はますます高まりそうだ。大関氏は「日本マイクロソフトから顧客を紹介してもらえるケースもある」ため、概ね同社とのパートナーシップには満足しているとのこと。

 WPC最終日に催された日本のパートナー向けのパーティには、日本マイクロソフトの樋口泰行社長も参加した。3日目のキーノートで、来年2013年のWPCが米ヒューストンで開催されると発表されたことを受け「(トロントと比べるとあまりみどころのない:編集部の推測)ヒューストンにも来てくれるパートナーが真のパートナーです」と話し、笑いを誘った。強い基盤を持つMicrosoftのパートナービジネスには、潜在的な成長力を感じさせる何かがある。

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