アジャイル開発の見積もり作業--利害関係者の期待に応えるための秘訣 - (page 2)

Rick Freedman (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2012-08-10 07:30

 スポンサーは、顧客を囲い込むための機能を調達するにはどういった投資が必要となるのかを投資家や幹部に説明する必要がある。一方、アジャイル開発を実践するわれわれは、たとえコストや最終的な機能一式、目標達成方法を知る術がなかったとしても、選択肢をオープンなものにしながら、反復し、インクリメンタルなやり方で前に進んでいきたいと考えている。では、賢いアジャイルチームは、どのようにしてこの難問に立ち向かっているのだろうか?以下は、答えにつながる3つのヒントである。

  • 意図を明確にする:こういった作業の目的は、ポートフォリオレベルに焦点を当てた大まかな戦略の立案であり、戦術レベルの詳細な作業を計画するものではない。そのことを、ロードマップの立案に携わる全員が理解しているかどうか確認しておく必要がある。
  • 戦術レベルに引き込まれないようにする:ビジョンを策定している最中にスポンサー、あるいは戦術レベル寄りの考え方をする開発要員やプロジェクトマネジメント要員から「誰がいつ何をするのか?」という細かい視点の割り込みが入ってくることも多いはずだ。現実的な戦略を立案するうえでこのような観点が必要になる場合もしばしばあるため、絶対にこういったことを避けるべきだというわけではない。しかし、戦略の立案という目的から逸脱し、プロジェクト計画会議になってしまうおそれがある場合、リーダーは会議の目的がロードマップの立案であるという点を参加者全員に再認識してもらうようにしなければならない。
  • スポンサーが大まかな投資をイメージできるよう手助けする:これまでに述べたような「ビジョン」というものも素晴らしいが、コストに関する現実的な疑問を無視したり、排除したりすると、周囲からのサポートを失うとともに方法論自体を骨抜きにしてしまうリスクを冒すことになる。

 アジャイル環境においては、予算や見積もりの算出が極めて複雑に思える場合もしばしばある。計画時に洗い出していない事項があることを想定し、反復的な過程で発見できるようにしておきながら、スポンサーがそういった機能にまつわるコストやリソースを思い描けるように手助けするにはどうすればよいのだろうか?その答えは簡単だ。スポンサーに尋ねればよいのである。

 検討している機能が期間内に調達できるのであれば、業務にとってどれだけの価値がもたらされるのだろうか?そういった価値を得るためにどれだけの投資を行ってもよいと考えているだろうか?こういった疑問に対する答えを出しておくことで、アジャイルチームに対して作業の枠組みを感じ取ってもらえるだけでなく、スポンサーに対して投資対効果や財務上の期待、リソースの制約といったものについての主導権を握らせるという潜在的メリットが生み出されるわけである。

 ITプロフェッショナルであれば、スポンサーから機会あるごとに「そのコストはXXになると言っていたじゃないか!」と責め立てられることに辟易しているはずだ。このため、スポンサー自らが頭に思い描いている数字を告げてくれるような関係を構築することになるわけである。こういった投資コストや期間を超過することなく成果物を調達できる保証はないものの、投資対効果の保証は彼らの仕事であり、成果物を調達するための専門性と創造性の発揮がわれわれの仕事であるという点を明確化できるようになるはずだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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