スマートデバイスを成長につなげるために--ZDNet Japan ビジネスカンファレンス

大川淳 2012年08月10日 10時00分

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 急速に普及するスマートデバイス。企業の成長ドライバーとしてスマートデバイスを活用していくには、デバイスを含む関連製品の検討、導入、活用のポイントをおさえることが必須となる。

 7月25日、スマートデバイスを多様な角度から考察、論議する「ZDNet Japan ビジネスカンファレンス」が開催された。

 基調講演には、プライスウォーターハウスクーパースでパートナー(テクノロジーソリューション)を務める松崎真樹氏が登壇、「スマートデバイス本格的活用に向けて」と題し、これらデバイスの全体的な動向から、具体的な導入と活用への道筋を示した。

プライスウォーターハウスクーパース パートナーの松崎真樹氏
プライスウォーターハウスクーパース パートナーの松崎真樹氏

 松崎氏は、「モバイル機器は今後も魅力的な製品が投入されることが見込まれ、外出先で快適に使用できるだけの能力は備わってきた。ただ、紛失・盗難時の対応、セキュリティの強化、ソフトのアップグレード・更新といった課題が浮上している。しかし、これらには対策があり、本格活用の阻害要因にはならない」とみる。一方で、脚光を浴びているBYOD(Bring Your Own Device:私物デバイスの業務利用)については、「企業の半数以上はBYODを視野に入れているとみられるが、やはりセキュリティの点が大きな課題となる」と指摘する。

 また、今後本格化する領域としては「メールや電話以外の業務用アプリケーションへの活用。ワークスタイル革新を伴う生産性の向上——といったあたりだ。ただ、ここでもエンドユーザーである従業員が、就業時間中に動画投稿サイトやSNSなどで時間を費やしてしまう危険性が考えられる。時間と行動を厳密に管理する体制が求められる」(松崎氏)

 実際の利用と活用の視点に立つと、スマートデバイスは基本的に場所や時間を問わずに仕事ができる環境を提供できる。そのため「従業員と個人というそれぞれの立場の境界線があいまいになる可能性が出てくる。殊にBYODが現実のものとなってくると、この境界線をうまく管理していかなければならない」という。

 なお本格活用の5カ条として、松崎氏は次の項目を挙げた。

  • ハード選定は本質的に重要ではない
  • デバイスとソリューションは必ずしも最新である必要はない
  • 現時点でモバイルに持たせるべきアプリケーション機能は、現システムのオンライン機能の補完的な役割を担うものと考え、それをスタートラインとする
  • モバイルアプリケーション開発の人材育成には、多少のアイドリング期間を想定する
  • 技術的変化は想定内として計画を立てる

 その上で「メールや社内システムの利用というあたりからパイロット導入したものの、そこで停滞してしまって本格活用に至らない事例は少なくない。そこで重要となるのは、戦略・構想、デザインから開発へのロードマップを明確にすることだ」と語った。

専用端末の置き換えは市場として成長する可能性あり

 その後は、インターネットイニシアティブ、ソリトンシステムズ、レコモットの各社が順に講演。各社の視点から、スマートデバイスの企業活用にむけたヒントを示した。

 そして最終セッションとなる討論会では、パネリストとしてノークリサーチ シニアアナリストの岩上由高氏、NTTドコモ 法人営業部 第二法人営業部 第五営業担当部長の遠藤正道氏、ZDNet Japan編集長の冨田秀継が登壇。朝日新聞社 専門記者(IT担当)平和博氏の司会のもと、意見を交わした。

  • ノークリサーチの岩上由高氏

  • NTTドコモの遠藤正道氏

  • 朝日新聞社の平和博氏

 平氏が「スマートデバイスがうまく効果を出せるような活用のポイントは何か?」と問題提起したのに対し、岩上氏は専用端末の置き換えを挙げた。

 「たとえばPOS端末はタブレットPCで代替できる。それだけでなく、中堅中小企業ではオーダリングシステムやさまざまな専用端末を数多く扱っているが、コストが高く、自由度が低いのが現状だ。ここにタブレットPCが浸透すれば大きな市場になり、SI事業者にも新しいシステム構築の需要が出てくる」と述べた。

 一方、遠藤氏はスマートフォンの企業活用を支えていくため、「高速・大容量のXi(クロッシィ)回線のエリア展開を前倒しで促進し、2014年度には人口カバー率を98%程度まで引き上げる」との目標を示した。また、さらなる市場創出に向けた動きも加速させていくという。

 「ドコモはさまざまな業界とコラボレーションを進めている。たとえば、東京慈恵会医科大学と行った遠隔画像診断補助システムの共同研究では、緊急搬送された病院で専門医が不在だった場合、専門医のスマートフォンに患者の検査画像や診療情報を送信。助言を授けながら、担当医の治療行為をサポートするもの。こうした企業や団体などとの協業は、これから増加していく」(遠藤氏)

 平氏は最後に「エンドユーザーのほとんどが、スマートデバイスを持ち、高速な伝送速度でクラウドにつながっているのが当たり前というような社会が、ほんの数年後にはやってきそうだ。そんな時代の到来に向け、どのような成長戦略を描けばよいか——そのヒントが今日の論議で示されたのではないか」と述べ、討論を締めくくった。

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