ファーストサーバが再発防止策の実施計画を公表、社員の処分も

ZDNET Japan Staff

2012-08-10 15:23

 レンタルサーバ事業を運営するファーストサーバは8月10日、6月20日から21日にかけて発生した一連の事故の再発防止策について、7月31日に公表した第三者調査委員会による調査報告書の各再発防止策の実施計画を発表した。

 計画は、調査報告書に記載されている「第1事故」と「第2事故」の2つに分けられている。

 第1事故は、サービスで使用されていた特定のサーバ群を対象に実施されたメンテナンスにより、顧客の大量のデータを消去した事故。メールシステムの障害解消が目的だった。

 第2事故は、1件目によって消失したデータを復元するために、消失データを復元できるプログラムを用いてデータの復元を実行し、その結果を「リカバードファイル」として顧客に提供したところ、想定以上の量のデータが、想定していないデータ領域に復元されたもの。

第1事故に関する対策の実施計画

 第1事故の再発防止策は、(1)開発・運用プロセスの見直し(8月10日までに実施完了予定)、(2)牽制(開発・運用)を含めた体制の確立(8月24日までに実施完了予定)、(3)システム変更業務の運用移管と分掌整理(8月24日までに実施完了予定)、(4)2次バックアップの取得(7月25日より取得開始済み)の4つに分かれる。

 (1)の開発・運用プロセスの見直しでは、システム変更のための社内マニュアルを開発および運用プロセスの視点から検証し、安全性を確認した上で、部内ルールとして再徹底する。また、運用組織における「リリース作業」の受け入れ厳格化、本番システムのシステム変更権限を運用部門に限定し、組織牽制を明確にする。さらに、システム変更のための社内マニュアルに沿った受け入れ基準を定義。運用部門での配布試験、運用部門でのサンプリングによるシステム検証試験およびレビューを実施するとしている。

 また、システム変更のための社内マニュアル及び配布システムを利用しても発生する「完全に排除できないリスク」への対応として、「プラグインを開発し、システム変更を実施する場合」と「ホスト環境のシステム変更を実施する場合」においては、コードレビューの実施をシステム変更に関する社内マニュアルに規定するとしている。

 このほか、(2)の牽制では、開発、運用組織に関して兼務者を極力廃止し、責任と役割の分担を明確化する、(3)のシステム変更業務の運用移管と分掌整理では、本番環境下のシステムへのリリース作業を運用部門へ移管することにより、開発担当者の属人的なシステム変更を抑制するとそれぞれ規定している。

 (4)の2次バックアップの取得については、毎朝午前6時30分に同一筐体内で取得する現在の運用のバックアップに加え、オペレーションミスや、プログラムのバグなどの影響を受けない外部バックアップシステムを構築し、2次バックアップを追加するという。

 この際、バックアップシステムは、バックアップシステム側から本番環境下のサーバに接続してデータを取得する設計とし、サーバのオペレーションや更新プログラムの配布システムの不具合によるデータの消失が発生しにくい仕組みにするとしている。

第2事故に関する対策の実施計画

 一方、第2事故に関する対策の実施計画は、(1)第2事故の前提となった第1事故の防止、(2)データ消失時の対応マニュアル整備(8月10日までに実施完了予定)、(3)リスクマネジメントに関する組織の設置(8月21日までに実施完了予定)の3つに分かれている。

 (2)のデータ消失時の対応マニュアル整備では、(1)での対策が機能しなかった場合に備え、データ消失時の対応マニュアルを整備。第2事故のような情報の漏洩事故の発生を防止する。具体的には、データ復旧ソフトによる復旧は実施しないことを明確化するという。

 (3)のリスクマネジメントに関する組織の設置については、第2事故と同様に、事前に想定していない事象が発生した際に、場当たり的な対応にならないよう、リスクマネジメントに関する組織を設置し、重大事故発生に備えた社員教育などを実施するとしている。

 なお、発表文で関係社員の処分を実施したことも明らかにした。また、代表取締役社長の磯部眞人氏が月額報酬の50%を3カ月間、取締役管理部長の本山一幸氏が同30%を3カ月間にわたり、自主返納することも併せて発表した。

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