三国大洋のスクラップブック

スクウェアが狙う商取引のルネサンス

三国大洋 2012年08月17日 19時20分

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 先週、スターバックスとスクウェアが提携したという発表があり、米国のメディアではかなり大きな話題になっていた。

 スタバといえば日本でも馴染みのあるコーヒーチェーン。興味をもってニュースを読まれた方も少なくないだろう。反対に「おサイフケータイがこんだけ普及してる日本には、基本的に関係ない話だろう」などと見落とされた方も多いかも知れない。

 さて、本連載「三国大洋のスクラップブック」では、今回と次回の二回に渡って、このニュースの一方の主役であるスクウェアと同社共同創業者ジャック・ドーシーCEOを解説する。グーグルと通信分野の話は「一休み」ということで、また後日。

決済の民主化

 CNET Japanの記事にある通り、この提携でスターバックスは少額を出資(註1)するほか、創業者で現CEOのハワード・シュルツ自らスクウェアの社外取締役に就任する。さらに肝心の事業面では、全米約7000のスタバ店舗でスクウェアのアプリを使った支払いを受け付けるという(註2)。

 今回の発表に関してまず目を惹いたのは、特にスクウェア側のPRへの力の入れようだ。シュルツはシアトルから、そしてドーシーはサンフランシスコから、わざわざニューヨークまで出向いて報道陣向けの発表を兼ねた朝食会に出席(註3)、複数の大手メディアとのインタビューをこなした。

 下のビデオはその中の一つ。CBSの「This Morning」という番組に出演し、チャーリー・ローズという著名なジャーナリストを相手に話をしている。BloombergやWall Street Journal(WSJ)あたりのシリコンバレーと共生しているようなビジネス系メディアなら意外性もないが、相手がチャーリー・ローズとなれば、もはや経済ニュースの域を超えて立派な「一般向けの話題」であろうかと思われる(註4)。

 スクウェアという会社について何か書こうとすると、どうしても「モバイル決済関連サービスを提供するシリコンバレーのベンチャー企業」という形容句をつけてしまうことが多い。ほかにもっといい説明が浮かばないので仕方なく付けているし、また完全に間違いというわけでもないけれど、どうも今一つしっくりこないところが残る。

 その原因を考えてみると、おそらくスクウェアが米国社会にもたらそうとしている質的変化がうまく伝わらず、その結果、「おサイフケータイと比べてどうか」「NFC(近距離無線通信)を使ったGoogle Walletとどっちが有望か」といった、得てしてユーザー目線での読まれ方しかしないのでは……という不安が残るからかもしれない。

 WSJのインタビューで、ハワード・シュルツが「決済の民主化」という言葉を口にする場面がある。クレジットカード会社との手続きをめぐるやり取りや、面倒な道具立ての準備が要らなくなることで、ほぼ誰でも簡単にカードでの支払いを受けられるようになる(マーチャントになれる)ことを指しての発言である。これを、30年も昔にアルビン・トフラーが口にした「プロシューマー化」の流れに位置付けたり、ブログやTwitter登場以降のオンライン・パブリッシング(情報受発信)と共通する構造変化と捉えたりすることもできるかもしれない。

 その一方で、「コーヒーひとつ買うにもクレジットカード」というような米国社会に固有の事情もある。翻って「カードを使うことに抵抗を感じる人が多く、そのためにオンラインショッピングでさえ代引きやコンビニ決済といった代替手段が登場・浸透」した社会では、こうしたサービスの受け止め方が異なってくるのも自然なことである。

 ただし、いま違うからといって、それだけで見くびり、目を逸らしていいものかどうか。iPhoneが初めて日本で売り出された頃、「iPhoneは売れない」という主張がそれなりの説得力をもつ考えとして(一部とはいえ)話題になったことを考えると、スクウェアの台頭はたとえ「海の向こうの出来事」だとしても知っておいて損のないことだ。

 と、以上を前提として、思いつくところを順番に記していく。まずは「スクウェアが何でないか」を確認するところから話を始めてみよう。(次ページ「スクウェアは何でないか」)

註1:少額の出資

具体的には2500万ドル。スクウェアは2009年11月のシリーズAラウンドから現在まで、合わせて1億6600万ドルの資金を調達している。今回の調達で、スクウェアの評価額は32億5000万ドル程度になったという話もある(プライベートな取引なので公表はされていない)。

Square - CrunchBase

ちなみに、最近何かと話題のシャープの時価総額が2300億〜2400億円(=ざっと30億ドル前後)とすると、潜在的な成長の可能性を期待される企業がそれ以上の評価を3年あまりで得てしまったというのは、たいしたものである(もちろん単純比較に意味がないほど、いろんな部分が異なるのだけれど)。


註2:提携内容

スクウェアの現状や提携の具体的内容、それに「なぜスタバがスクウェアと組むことにしたのか」といった点については、下記の記事などを参照いただきたい。

モバイル決済のスクウェア、スターバックスと提携 - ハワード・シュルツ氏も社外取締役に - WirelessWire

スターバックスのハワード・シュルツCEO、スクウェアとの提携を語る - Wired



註4:インタビューのビデオ

CBS This Morning以外に、Bloomberg West、WSJ、それにNYTimesといったところまで2人は足を運んでいる。昨年6月にクライナー・パーキンス(KPCB)などから1億ドルを調達した時でさえ、こんなことはなかったと思う。

なお、チャーリー・ローズらとのインタビューの中で、4分前あたりから「TWITTER VS. THE NYPD」という字幕が出てくるのは、ジャック・ドーシーの「もうひとつの会社」であるTwitterのサービスを使って、ブロードウェイの劇場での乱射を予告した容疑者のツィートを、ニューヨーク市警がツィッターに証拠として提出するように要請し、同社もこれに応じたという話に関連するもの

New York Police Subpoena Twitter to Identify Potential Aurora Shooting Copycat - Mashable

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