「なるべく多くのお客様にCreative Cloudへ移行してもらいたい。今後は、その部分に多くのリソースを割いていくことになる」
アドビシステムズのクレイグ・ティーゲル社長はそう切り出す。
多種多様なデバイスが活用されるとともに、それらに向けた様々なサービスが創出されるなか、クリエティブ製品の需要が拡大。導入の敷居を大きく引き下げたCreative Cloudは、需要拡大の重要な武器になる。多くのソフトウェアベンダーがクラウドへの移行を単価下落の要因と捉え、二の足を踏んでいるのとは一線を画した姿勢だ。そして、デジタルマーケティングと呼ぶ領域にも積極的に取り組む姿勢をみせる。
各界のエグゼクティブに価値創造のヒントを聞く連載「ZDNet Japan トップインタビュー」。今回は、今年、日本法人設立から20年目を迎えているアドビシステムズのクレイグ・ティーゲル社長に聞いた。
--まず、2012年5月に出荷を開始したAdobe Creative Suite 6(CS6)と、Adobe Creative Cloudの手応えを聞かせてください
良い手応えを感じています。CS6は、これまでのCreative Suiteのなかでもかつてない機能向上を遂げたものです。PhotoshopやIllustratorの強化だけでなく、InDesignやDreamweaver、Premiere Pro、After Effects、Flash Professionalなど、すべての製品で機能が強化されています。
既存のCSユーザーが刺激を受けたばかりではなく、新たなユーザーからも高い関心が集まっています。企業や政府、教育分野などといった幅広い顧客層に受け入れられていますね。
特筆できるのは、新規ユーザーが増加しているという点です。たとえば、従来のCSでは永久版のライセンスやパッケージを購入するといったスタイルでしたが、Creative Cloudではサブスクリプションとして、1カ月や3カ月などのような形で購入できるため、これまでとは異なった形で手軽に使ってみるといった動きが見られています。つまり、新たな顧客層に、アドビの製品を使っていただく機会が広がったといえます。
これまで40万円していた製品が、月額5000円から利用できます。実際、Creative Cloudを利用しているユーザーの約4割が、これまでアドビ製品を利用したことがない新規ユーザーとなっています。
また、Creative Cloudでは、新たな機能を随時追加することができますから、利用者にとって大きなメリットを享受できるといえるでしょう。もうひとつ見逃せないのが、6月から量販店においてアドビキーカードの取り扱いを開始したことです。販売ルートを拡大し、新たな顧客層を獲得するという効果が出ています。量販店から見れば、パッケージでは在庫負担が大きかったが、キーカードであれば在庫を置きやすくなる。アドビの製品に対する販売環境が大きく変化したといえます。
--しかし、アドビはクラウドサービスに参入するのに、ずいぶん時間がかかりましたね(笑)