本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今週は、米IBMのSamuel Palmisano会長と、富士通の下島文明執行役員常務の発言を紹介する。(ZDNet Japan編集部)
「勝者は嵐を生き延びた者ではなく、ゲームのルールを変えた者だ」
(米IBM Samuel Palmisano 会長)
先頃発表された米IBMの直近四半期(4~6月)決算は、純利益が前年同期比6%増、売上高は同3%減だったものの、為替変動の影響を除くと1%の増収という堅実ぶりを示した。とくに高収益のソフトウェア・サービス事業や新興国への重点投資が実を結び、増益につながった。
冒頭の言葉は、こうしたIBMの堅実な成長路線を、昨年末まで10年間にわたってCEOとして築き上げてきたPalmisano氏が、とくにリーマンショックの危機以降、講演などでよく語っているものだ。明言というより「名言」である。
Palmisano氏といえば、IBMをハードウェアメーカーからソフトウェア・サービス企業へと大転換させた立て役者である。ハードウェアよりもソフトウェア・サービスのほうが、より大きな付加価値を生み出せると見た同氏は、CEO就任後すぐにコンサルティング会社を買収する一方で、ハードディスクやPCなどの事業を売却した。
その後も企業向けソフトウェアを開発する新興企業を相次いで買収したり、金融業界などで経験を積んだ人材を積極的に採用したり、先端研究部門をビジネス志向に方向転換させるなど、ソフトウェア・サービスの強化を続け、今ではこの分野が全売上高のおよそ8割を占めるほどになっている。
さらに同氏は、ビジネスのグローバル化も一段と推進。とくにBRICs諸国へ積極的に進出した。その結果、今では米国以外の売上高が全体のおよそ6割を占めている。
その意味では、同氏にとって「ソフトウェア・サービス企業への転換」「さらなるグローバル企業へ」といったアプローチが、ゲームのルールを変えるチャレンジだったのかもしれない。
実は、同氏の前任で同じくほぼ10年間CEOを務めたLouis Gerstner氏も、次のような言葉を残している。