それによってIT部門は、会社の全アプリケーションが用意されている標準的な環境を作り、従業員が会社のPCからでも、自宅のPCやラップトップからでも（VPN越しに）、タブレットやスマートフォンからさえアクセスできるようにすることが可能になる。この環境の見た目や使い心地は従来のPCに似ているが、アプリケーションやすべてのデータは会社のサーバ上にあるため、より安全であり、IT部門にとっては管理もトラブルシュートも容易になる。この技術は、かなり前から「シンクライアント」という名前で出回っていたものだ。しかし、2012年にはこの技術が流行する要因が3つある。1）BYOD、2）モバイルデバイス、3）すべての重い処理をサーバに追いやれるため、PCのアップグレードを遅らせることができる。このため、企業はまだ大規模なシンクライアント化こそ進めていないものの、デスクトップ環境はシンクライアント化が始まりつつある。
2．ビッグデータ
ここ数年、一番大げさに使われ過ぎているIT用語が「クラウドコンピューティング」だとすれば、2012年の新しい流行語は「ビッグデータ」だ。クラウド同様、ビッグデータという言葉も、マーケティングで乱用されている。まず理解すべきなのは、ビッグデータと言うときには、これまでも報告で使っていた社内の「構造化」されたデータを、ソーシャルメディアストリームや（交通、農業、犯罪などについての）政府が提供する自由に利用できるデータなどの、公開されている「非構造化」データと組み合わせて使うことを指しているということだ。
これら2種類のデータを組み合わせることによって、顧客が自社の製品と競合他社の製品についてどう感じているかについて洞察を得たり（ソーシャルメディアストリームから）、製品に対する需要の変化を読み取るのに役立てたり、政府の動向データから市場の成長や縮小を予想したりすることができる可能性がある。これが、ビッグデータが重要な理由だ。しかし、だまされてはいけない。ビッグデータはまだ揺籃期にある。ビッグデータを扱いきれる優れた商用ツールはあまり多くない。またこれには、データへの正しい魔法のかけ方を知っているITプロフェッショナルが必要で、そういう人材への需要は非常に高い。
1．クラウド、クラウド、そしてクラウド
基本的に、世の中には3種類のクラウドがある。完全なインターネットクラウド（これを「パブリッククラウド」と呼ぶ人もいる）、プライベートクラウド（これは従来のデータセンターのように見えるが、仮想化技術がふんだんに使われている）、そしてハイブリッドクラウド（パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて統合したもの）だ。誤解しないでほしいが、2012年にはこれらの3種類すべてが繁栄している。パブリッククラウドは、「クラウド」と聞いて多くの人が思い浮かべるものであり、多くの場合Salesforce.comやWorkday.comなどのホスト型のウェブアプリケーションか、RackspaceやAmazon AWSなどのインフラサービスを指す。しかし、MicrosoftやIBM、Hewlett-Packard（HP）などの古くからあるIT企業も、静かにクラウド市場で大きな存在になりつつある。
プライベートクラウドとハイブリッドクラウドは、強力なセキュリティが必要であったり、簡単には動かしたりクラウドに移行したりできないレガシーアプリケーションを持つ、大規模な企業や組織向けのものだ。どちらのタイプのクラウドソリューションも勢いを増しつつあり、特に目立っているのは、簡単な部分はクラウドに移行済みで、大きく、費用も高く、動かしにくいものに取りかかろうとしている企業での取り組みだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
