IDC Japanは8月30日、エンタープライズアプリケーション(EA)パッケージとビジネスインテリジェンス(BI)ツールの各パッケージ市場を対象とした国内EA/BIパッケージ市場の2011年の分析と2016年までの予測を発表した。
EAパッケージは、統合基幹業務システム(ERP、IDCでは“Enterprise Resource Management:ERM”と呼んでいる)や顧客情報管理システム(CRM)、サプライチェーン管理システム(SCM)のほかに製品ライフサイクル管理システム(PLM)など製造系アプリケーションも含まれている。
2011年の国内EA/BIパッケージ市場規模は前年比3.9%増の3037億6000万円。2011年の同市場は、東日本大震災の影響を受けてサプライチェーンの脆弱性が露呈。厳しい市場競争に対応するために顧客関係管理の強化が課題として浮き彫りになっている。こうしたことから、SCMは前年比5.6%増、CRMは前年比8.1%増となっている。
意思決定に絡んだ情報分析に対するITニーズは依然として高いが、BIツールは、2009年が前年比10.5%増、2010年が前年比6.2%増となっていて、2011年は前年比4.4%増と成長の鈍化傾向が見られるようになっている。震災の影響でBIツールの導入優先度が一時的に下がったためと分析。2011年のEA/BIパッケージ市場では、SAPが2桁成長で市場を牽引しているという。
2011年に最も成長率が高いCRMパッケージ市場では、セールス分野でSalesforce.com、マーケティング分野でSAS Institute、顧客サービス分野でSAP、それぞれ首位を獲得しており、ベンダー間のシェア争いが激化していると解説する。
2番目に成長率が高いSCMパッケージ市場では、在庫管理や物流管理、生産計画の各分野でSAPが首位を堅持。3番目に成長率が高いBIツール市場では、エンドユーザークエリ、レポーティング、アナリシスの分野でSAP、アドバンスドアナリティクス分野ではSAS Instituteがトップとなっている。
2011年のERPパッケージ市場は前年比2.3%増で、SCMや製造系アプリケーション、CRM、BIと比較すると低成長となっている。だが、ERPパッケージ市場の規模は1598億9600万円と、そのほかを合算した規模よりも大きく、市場の成熟化が進んでいると説明している。
ERPパッケージ市場の中では、会計や業績、戦略を管理する、いわゆるEPMが2011~2016年の年平均成長率(CAGR)4.1%で推移、ERPパッケージ市場の伸びしろになると予測している。ERP市場はSAPがトップだが、伸びしろ市場となっているEPMソフトウェアではOracleがトップを守っていると説明している。
2011~2016年のEA/BIパッケージ市場のCAGRは4.0%と予測。特にCRMパッケージ市場はCAGR5.1%で推移するとみている。国内のEA/BIパッケージ市場は、2016年に向けて堅調に推移すると予測している。だが、欧米市場と比較すると成長率は低く、システム管理ソフトウェアと比べると、世界での日本の市場占有率も小さいのが特徴と説明する。
その理由の一つとして、EA/BIパッケージの活用、ITシステムを独自に開発することで、業務の効率化はすでにできていると考える経営層が多い点が挙げられると分析している。IDC Japanの赤城知子氏(ソフトウェア&セキュリティグループマネージャー)が以下のようにコメントしている。
「定番型の“業務効率の改善”や“コスト削減”の刷新需要を守るだけでなく、企業成長を支援する提案力が必要。そのためにEA/BIを柔軟に組み合わせた新しい解決策の創造力が、ベンダーにとって新規需要開拓のために必要となっている」