矢野経済研究所は9月6日、NFC(Near Field Communication)を搭載した携帯電話やスマートフォンの市場動向をまとめた。2013年3月末の国内のNFC搭載端末の出荷台数は3180万台と予測している。
NFCは2002年にソニーとPhilipsが双方向無線通信を目的に共同で開発した近距離無線通信規格であり、端末間のデータを送信する近距離通信技術の国際規格。従来のRFIDと異なり、双方向に通信できるともに読み書きが可能だ。
NFCで通信可能な非接触ICカード規格はFeliCa、タイプA、タイプBがあり、プラスチックカードやスマートフォン、タブレットなどのモバイル端末に搭載され、製品化されている。
国内では現在、FeliCaが主流であり、交通機関での乗車券、電子マネーとして広く利用されている。2004年の夏にFeliCaを搭載した携帯電話サービス「おサイフケータイ」が登場している。
海外市場での非接触ICカード規格は、大手クレジットカードが採用するタイプA、米国や一部の地域で身分証明書として運用されるタイプBが事実上の世界標準規格といわれている。2011年にNFCに対応するタイプAとタイプBのスマートフォンが日本市場に投入され、FeliCa、タイプA、タイプBのすべてに対応するスマートフォンが計画されている。
日本国内の非接触ICカードはこれまでほぼFeliCaが採用されている。FeliCaは高いセキュリティと処理能力の高さを特徴とされているが、コストが高いことも問題視されている。今後タイプAとタイプBの導入でコスト低減による市場拡大が期待されている。
タイプAとタイプBは世界標準規格であることから、サービス範囲が拡大され、ユーザーの使い勝手の向上も期待されている。主な拡大サービスとしては国際クレジットサービス、データ通信を利用したスマートポスター、住民基本台帳やICパスポート、IC運転免許証といった身分証明書などがある。

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2012年3月末にNFCを搭載する携帯電話とスマートフォン(ハンドセット)、タブレットのメーカー出荷台数は2175万台、2013年3月末は3180万台を見込んでいる。2012年夏まではFeliCa規格を搭載したハンドセットが多数を占めるが、この秋冬商戦以降は、FeliCaに加えて海外で普及が進むタイプAとタイプBに対応するスマートフォンが導入される。
2013年度以降は、国内市場でFeliCa、タイプA、タイプBに対応するスマートフォンが主流になる見通しとしている。NFC搭載ハンドセットとタブレットの出荷台数は2014年3月末で3200万台、2016年3月末で3300万台を予測、NFC搭載製品の大半はスマートフォンになると予測している。