コンサルティングの現場から

ITを体系的に理解する:ITの歴史は「文書の進化」

宮本認 (ガートナー ジャパン) 2012年09月11日 12時00分

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 ITの進化には「伝票・台帳・帳票の進化」という一つの潮流がありました。ITシステムはこの分野において「ERP」という一つの完成形を見ます。

 前回、副社長はERPの歴史を総括して「ITをITらしく使うってことだよ」という結論を得ました

 ガートナー ジャパンのコンサルティング部門でマネージング・パートナーを務める宮本認氏が、コンサルティングの現場から得た知見をもとに、対話形式でITの本質を追究する本連載

 今回、副社長と宮本氏は進化のもう一つの潮流「文書の進化」について対話を始めます。

第4回 サマリー

・文書のIT化は、ワープロからスタートし、PCの普及とネットワークの網羅によって、文書を共有するという新しいワークスタイルを生んだ
・メール、スケジュール管理、文書管理など、ホワイトカラーの仕事の仕方が、大きく変わることとなった
・こうした文書系の発展が、CRMなどの営業支援や、経営管理向けの分析支援などの発展中のシステムの萌芽となり、今なお発展を続けている
・文書系のシステムは、インターネットの登場によって、企業にとって、新たなマーケティング・メディアとして発展した
・さらに進化したインターネットは、その技術を企業内にも転用させ、自社内も普段の生活と同様の『環境』で働けるようにしているとともに、情報システムの提供ルートの一つとしても発展をしていった。それがクラウド


 さて皆さん、「バブル時代」を思い返してください。いえいえ、ネットバブルではありません、80年代の日本を包み込んだ熱狂的なバブルです——(ZDNet Japan編集部)

バブルとともに消えたもの

画像はイメージです

「副社長、バブルのときにあったもので、今はなくなっているもの、何か思いつきますか?」
「何だろう? 怪しいギラギラしたおじさん、いなくなったよな。あと、おしゃれなディスコ……結構、思いつかないもんだなぁ……」
「そう、人間の記憶なんて、そんなもんですね。その中で一つ、思い出していただきたいのが『ワープロ』です」
「あぁ、あったあった。『ワープロ』ね」
「僕もバブル最後期に社会人になったんですが、ワープロを使って目が悪くなっちゃいました」
「私も本当に四苦八苦したよ……罫線が引きやすいワープロとか、変換が賢いワープロとか、いろいろあったよな。そうそう、フロッピーディスクもどんどん小さくなってったりして」
「あぁ、そうでしたね。ここで申し上げておきたいこと。それは『文書を電子化する』ってことです。これが、ITのもう一つの大きな世界です。先ほど、伝票、台帳、帳票という電子化の流れがあったとお伝えしました。そこに、もう一つの大きな柱である『文書の電子化』という流れが出始めたわけです。昔の言葉で『OA』って言われていましたね」
「OAかぁ……あったね、そんな言葉」
「はい。そして、PCの台頭。そして、Windows」
「そうだねぇ、エクセルとか、ワードとか、パワーポイントとか、社内で使う資料がごちゃごちゃし始めたときだ」
「そうです、そうです。文書ってものを電子的に作る行為が、ひとつの完成形をみましたね」
「ま、最近は作る側も上手になってきてるけどね」
「そうですね。で、それぞれのPCでやっていたこと。これ、なんとかしたくなりませんか?」
「ネットワークでしょ?」
「その通り。近くにいる仲間とつないで、LANを作り、みんなで文書を共有する。全国に散らばっている仲間とつないで、WANを作り、みんなで文書を共有する。俗に言う、ホワイトカラーって言う類の人たちの仕事が、結構変わることになりましたね」
「ホワイトカラーなんて、資料作ってるか、しゃべってるか、どっちかしかしてないものね」
「ネットワークでつながると、できることが出始めました。単にファイルを共有するだけじゃなく……」
「あ、メールだ!」
「そうです。メールの発想自体は昔からあって、ホストコンピュータでメール的な機能を作っている企業は結構ありました。どちらかというと、掲示板的なものが近いかもしれませんが」
「でも、確かにこれも私たちの仕事を大きく変えたね。社内で電話を使うことが、ぐっと減ったような気がするし、今となってはメールのない世界は考えづらいよ」
「クーラーとか暖房とかと同じレベルですね。ない生活は考えづらい。この当時、グループウェアというシステムが非常に流行ってましたね」
「確かに。いろんなことをこれでやるようになった。会議室予約に始まり、マニュアルを載せたり、ミーティングのセットアップ、スケジュール管理、当然、資料自体もここで管理するようになったよ。そうそう、業務報告を載せるようになったのも、この頃かもな」
「ワークフローっていうのも、この時に出始めたやり方ですよね。今でも紙の資料は残っていますが、原版はほぼすべてコンピュータで管理するようになりましたし、みんなで共有しているからスケジュールや会議室など、これもコンピュータで管理するようになりました」
「今から考えると、昔どうやってたか覚えてないな」
「そう、笑っちゃいますよね。ですが、この文書を電子的につなぐってのが、今のITの中では非常に重要になってきています。当然、文書っていっても、千差万別でいろいろなものがあるわけですが、組織で働く以上、『資料作るか』『しゃべるか』くらいのことしかしていませんから、そこの働き方ががらっと変わる可能性が、このタイミングで起き始めたんですね」
「文書って言われると、今一つ、ピンと来ないねぇ……」
「そうですねぇ。僕も不勉強で申し訳ないんですけど、『ドキュメント』とか『コンテンツ』がいいかなぁとか、いろいろと思ったりはしているんですけど、『文書』って言うのでいいかと、ひとまずは思っています」
「あぁ! コンテンツの方がいいよ。おそらくは、写真や音楽ファイルや、映像なんかもその中の一つだってことになるんでしょ?」
「いかにも! あ、失礼しました。その通りです。伝票、台帳、帳票って世界では、我々ITに携わる人間の間では、『トランザクション』という言葉でひとくくりで言ってしまうことが多いんですが、トランザクションではない世界、すなわち、コンテンツのコミュニケーションの世界が、ITの重要な世界に入ってき始めたんです」
「あぁ、私たちにもなじみのある世界に、なんとなく入ってきたわけね」

「トランザクション」と「コンテンツ」の融合

「先ほどから説明している『伝票、台帳、帳票』の『トランザクション』が発展し、『文書』の世界をみんなでやりとりするようになると、ある一つの視点が出始めます」
「何?」

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