コンサルティングの現場から

ITを体系的に理解する:ITの歴史は「文書の進化」 - (page 2)

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2012-09-11 12:00


「トランザクションは、組織全体でやりとりされるものですし、文書も最初は個人でしたが、みんなで共有するようになり、組織全体のものになりはじめました。そうなると、『自分』視点で括ってくれると見やすくなるのにという流れにどうしてもなっていきます」
「あぁ、そうだよな。私が必要なものを出してよ、ということだ」
「そうです。そうした『人』視点でのIT化が進んでいくようになると、もう一つ『顧客』視点でのIT化も進んでいくようになります。要は、伝票でも、台帳でも、帳票でもない、『名簿』『手帳』『日誌』のシステムの登場ですね」
「うぅん……よくわからん」
「副社長のところも、営業支援システム、入れてるじゃないですか。これは、営業マンの顧客への訪問計画と訪問記録を管理していますよね。顧客や営業マンというのは、いわゆる『名簿』ですし、訪問計画や訪問記録ってのは、いわゆる『手帳』『日誌』ですね。言ってしまえば、『文書』的なやりとりをかなり形式的に処理するシステムです。こういう仕組みを、SFAなどと呼んだりします。また、調達支援システムがあるじゃないですか。社長の会社の取引先名簿が管理され、その評価が載っているやつ。こういうのも、融合型のシステムの一例でしょうね」
「あぁ、なるほど。たとえば、人事システムなんかもこれに該当するのかな?」
「僕はそう捉えています。人事システムというのは、『勤怠』『給与計算』『福利厚生』『人事情報』『評価』から概ね構成されますが、人事情報や評価のところなんかは、典型的な融合型のシステムですよね」
「そうだよね。確かに、定型的な仕事になるのは、何も伝票がらみのところだけじゃあない。営業だって、調達だって、人事だって、定型的な仕事ってのは文書でやってるわけだから、このあたりも確かにシステムとしては発展するわけだ。それに、いろんなものが定型化したシステムって感じで成立しそうだな」
「そうですね。たとえば、製品開発の開発プロジェクトの管理など、プロジェクト管理領域に使っていったりってことは、すでに行われていますね。これらの融合型のシステムは、次回以降で話しますが、インターネットと融合することによって、大きな発展を遂げることになります。先ほど申し上げたように、顧客や取引先との接点に使われるようなシステムが多いですから、その『接点』が変わると、インターネットなどと融合して、すごいことになっていったりします」
「そうね」
「もう一つ。この融合型の派生形と呼んでいいものが、『分析』をしていくシステムです。要は、名簿とトランザクション、すなわち、売上などと掛け合わせを行って、顧客別の売上傾向を把握したりして、必要な対策を考えるといったことが、ITで結構支援できるようになってきているんです」
「あぁ、営業企画の○○くんが、エクセルで必死にやってるやつね」
「そうですね。エクセルでもやってやれないことではないんでしょうが、ちゃんとしたコンピュータでやったほうが、『速度』と『容量』が大きいので、よりたくさんの情報にのっとって分析できたりするわけです。ま、こういうシステムを作るかつくらないかは、データの量、すなわち、顧客の数や、伝票の数に依存しますね」
「でも、この領域は進化しそうだねぇ」
「そうなんです。ただ、どこまで進化するか、その終わりのイメージがないんですね、この世界。インターネットの世界が出てきて、さらに拍車がかかってきています。じゃ、そろそろ、インターネットの世界をのぞいてみましょう」

次なるバブル。そして新しいマーケティング

「こうした、それぞれのコンテンツをみんなで使おうって流れが一気に拡大したのが、ITバブルです」
「おぉ、またバブルか……今の流れは読めたよ。でも、コンテンツのコミュニケーションの世界の説明って、さっきの『トランザクション』だっけ? その説明に比べて、なんか雑じゃなかった?」

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