「まぁ、10年間をざっと流したわけなんですが、言ってしまえば、ものすごく副社長もイメージしやすいことだと思ったんですね。ですから軽く流しました。文書を電子的に作り、仲間とつなぐ。まさに、ユーザーの皆さんそれぞれが普段経験されている世界ですね。それが、世界へと広がっていったのがインターネットでした」
「私たちもその恩恵にはあずかってるよね。ウェブで販売もできるし、宣伝もできる」
「そうですね。当時は、eCommerceという言葉が流行り、それが世界の在り方を変えるくらいの勢いで話してましたね。コンサルティング会社の中でも、eCommerceをやっているコンサルタントは『時代の先端を走っているんだ!』的な高揚感を持っていましたし、多くの人材がコンサルティング会社を辞めてITベンチャーを立ち上げたり、転職したりしていきました」
「確かに、確かに。私たちも昔はベンチャーだったからそういう人たちといっぱい付き合ってたもんだよ。あのときの人たち、今はどうしてるのかしらん?」
「さぁ。細々とやっている人もいれば、それなりになっている人もいるし、千差万別でしょうねぇ。でも、総じて言えるのは、衝撃ってほどではなかったかもしれませんが、ゆっくりとではありながらも、インターネットは世界を変えてきたってことでしょうか」
「そうだなぁ。確かに、いろいろ変わったよね。ここは、私もいろいろと考えてるから、私が話していい?」
「どうぞ」
「私が思うに、インターネットってのは、企業にとってマーケティング・メディアだと思うんだよね」
「ふむふむ」
「ドラッカーって私、読んだことないんだけど、ドラッカーに言わせれば、経営の目的って顧客の創造なんでしょ? この顧客を創造するメディアとして、インターネットは非常に優れているわけだ。私たちは、製品を作り、お客様にお知らせし、注文を頂き、お届けする行為をしているわけだけど、お知らせと注文を頂くことをインターネットでやることができる。うちは、店舗販売もやっているけれど、昔はインターネットが店舗販売にとって代わるってすごく周囲の人に言われたんだな。実際には、とって代わる流れは『少しずつ』しか起きていなくて、お店というメディアとインターネットというメディアが二つ出来て、お客様にとってより便利で快適になっているって感じだと思うんだよね」
「そうですね、まさにその通りだと思います。企業にとって、インターネットというのは、まさしく新しいメディアであり、チャネル。これを上手く使いこなしているからこそ、副社長の会社は成長したんでしょうね。ちなみに副社長、お言葉なんですが、製品を作るってところでも、インターネットって使われること、あるんですよ」
「何だよ、それくらい知ってるよ。P&Gとかが、技術の公募とかしたりしてるってことでしょ? 知ってるよ。それに、銀行とかデジタルコンテンツを売ってる会社とかは、インターネット自体がもうビジネスそのものになるってこともあるって、それくらい知ってるよ。そういうのも含めて『メディア』っていったの」
「あ、すみません。じゃ、話を戻して、新しいメディアとして台頭し続けるインターネットの世界の中で、企業と顧客の関係に視点をおいた時に起きている大きな変化、何だかわかりますか?」
「もちろん分かるよ。今までは、会社とお客様の関係はマスとして捉えていたけど、インターネットでは、お客様をひとりひとりのお客様として捉えることができるってことでしょ?」
「その通りです。これは、さすがにインターネットがあると、非常に身近になることですよね。さきほどちょっと出てきたP&GのCIOだった方が言っているんです、『企業と顧客の関係は益々ダイレクトになる』って。消費財メーカーで、顧客をバリバリのマスで捉えていたP&Gでも、そう考えてるってことなんでしょうね。顧客の捉え方をその根っこから変えるという意味で、ITが企業の業務のあり方を根本から変える良い例ですよね」
「そうだねぇ。そういう意味で、まだまだ変化や進化をするんだろうから、そのあたりは注視しないといけないわな」
「そうですね。ヤフーのポータルに始まり、グーグルの検索、アマゾンの通販、Wikipediaに、そして今はフェイスブックとツイッター。そうそう、アップルの生態系(エコシステム)も忘れてはいけませんね。このあたりは、僕もインターネットだけの専門家ではないので上手くは言えませんが、より便利な方向に変化と進化を続けている感じですね。中には、セカンドライフみたいに企画倒れに終わっちゃったものも有象無象あったりしますけど、概して、ひとりひとりが便利になり、多くの人に支持されるならば、ものの1〜2年くらいで世界中に急速に広がっていくのが、今のインターネットの特徴でしょうね」
外から中へ
「それくらい画期的なインターネットなんですが、インターネットが出たことによって、二つの変化が起きつつあります。そして、情報システムも変化を見せつつあります」
「なんか、最終局面に入りつつあるって感じだな」