「Windows 8」の発売をあと約40日後に控え、マイクロソフトとPCメーカーとの間で足並みの乱れが表面化しつつある。
というのも、10月26日の発売日に向けて、様々な制限がPCメーカー側に突きつけられ、それに伴ってマーケティング活動にも支障が出ようとしているからだ。
店頭展示を開始しても予約販売できず
関係者によると、Windows 8搭載PCの新製品に関しては、発表日そのものに制限はないものの、量販店店頭などへの展示は10月12日以降という形に申し入れが行われているというのだ。
さらに、この時点では詳細なスペックやカタログなどの配布はできず、単に製品だけの展示が可能になる。
実際にカタログなどが店頭に配置されるのは10月19日。ここでようやく製品に関する情報が店頭で入手できるようになるのだ。
しかし、ここでもまだ制限がある。製品の詳細情報が入手できても、この時点では予約販売ができない。予約販売が可能になるのはWindows 8発売の3日前となる10月23日なのである。
つまり、量販店にとっても、Windows 8商戦が実質的に開始されるのは10月23日。発売日を待たずに予約販売をできるのは評価できるが、本来ならば店頭展示が開始される10月12日から予約販売を行いたいというのが本音だろう。
量販店にとって、予約販売ができない製品に店頭スペースを割くほど効率の悪いことはないからだ。
生産手法が複雑化、費用はメーカーが負うことに
一方、PCメーカー側が生産面で予想外の苦労をするといった問題も浮上している。
それは生産ラインにおいてWindows 8をインストールする際、マイクロソフト側とのやりとりに大きな変更があったことが背景にある。
これまでの生産手法は、マイクロソフトから提供されたライセンスをもとにインストールするという、いわばオーソドックスなものだった。
しかし、Windows 8ではこれが大きく変更される。生産ラインでOSをインストールする際には、まずマイクロソフト側のサーバにネットワークを通じてアクセス。そこからプロダクトキーを入手して、これをPCに入力してインストール作業を行うことになる。また、インストール後はハードウェアの構成情報などをマイクロソフト側に送信し、マザーボード上の主要部品をはじめ、PCを構成する部品情報とWindows 8のプロダクトキーとを連携させる。加えて、工場からの製品出荷後、24時間以内に製品を工場から出荷したことをマイクロソフト側に通達する必要がある。
こうした体制を構築するように、全世界すべてのPCメーカーに対して要望したのだ。
マイクロソフトにとっては、こうした一連の情報管理を行うことで、市場において不正なWindowsが利用されることを阻止する狙いがあるのだろう。
そして、これらのシステム構築に関わる費用は、PCメーカー側がすべてを負担する。Windows 8搭載PCの量産を開始するまで何度も試験を行うという準備をしてきた。
大きな生産方法の変更は、PCメーカー側の不満を高める要因になっているといえよう。
そうした動きに加えて、マイクロソフト自身が「Surface」というタブレット端末を自社ブランドで投入し、直接競合する可能性があるというのだから、PCメーカー側の不満は頂点に達することになる。
日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、9月7日に開催した「マイクロソフト ジャパン パートナー コンファレンス 2012」の基調講演において、「Windows 8に関しては、グローバルでの一元的な施策を実行しているため、これまで通りに情報が出てこないとの指摘もいただいている。これは競合戦略上のものであり、その点を理解してもらいたい」と述べ、参加したパートナー企業に理解を求めた。
エコシステムを最重視するというのが、マイクロソフト側の姿勢。しかし、手放しでその言葉を信じることができないというのが、PCメーカー側の想いなのだろう。
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