IBMパルミサーノ会長 来日講演--リーダーこそ長期的な視点を持つべきだ - (page 2)

冨田秀継 (編集部)

2012-09-14 14:34


 1911年に三社が合併してComputing Tabulating Recordingが誕生してから、米IBMは創立101年目を迎えている(International Business Machinesに社名を変更したのは1924年)。

 「長きに渡って成功してきたIBMだが、その中で一つの真実が見えた。(ビジネスが)永続的なインパクトを与えたいなら、長期的な視点を持つ必要があるということだ」とパルミサーノ氏。長期的な視点は、リーダーが必ず持たなければならない資質だとする。

「安定でも安全でも、そして保守的でもいけない。(長期的視点の)見返りはパワフルなのだ。根本的な質問を自分に投げかけなければ。企業が創設者よりも長生きするには、カリスマとリーダーシップを混同してはいけない。リーダーは、自分がいなくても成功し続けるようにしなければならないのだ」(パルミサーノ氏)

「トーマス・J・ワトソン(米IBM初代社長)は、永続する企業文化を作った。製品やサービスが成功するだけではだめで、価値観がいかに重要かを示したのだ。価値観とは、永続する特性やアイデンティティを示すもの。組織のものの進め方を織り込んでおり、価値観に基づいて(ビジネス上のさまざまな)選択肢をチョイスしていくのだ」

 また、企業は時に「単一の顧客か、あるいは社会か」などと、相反する要素に板挟みになることもある。パルミサーノ氏は「どちらを優先したらよいだろうか」と参加者に疑問を投げかけた。

 しかし、答えは「どちらかを選ぶのは間違っている」だ。「両立させるのだ」(パルミサーノ氏)

 相容れない利害では妥協してはならず、両者が交差する点を見い出す努力をすべきだという。また、交差点の作るためのイノベーションを実現しようと訴えてもいる。

コモディティ化の圧力には

 企業の長期的な繁栄では、コモディティ化への対応も重要になる。このテーマを語るのに、IBMの会長ほど適任の人物はいないだろう。

 IBMは業績が悪化した1990年代、ルイス・ガースナーという新しいリーダーのもと、血を入れ替える改革を断行した(参考:IBMの変革)。よく言われるように、ハードウェア主体のビジネスから、ソフトウェアとサービスへと転換させたのだ。

 ソフトウェアとサービスを強化する企業買収——たとえば米PricewaterhouseCoopersのコンサルティング部門の買収などを手がける一方で、1990年代の終わりにはネットワーク部門をAT&Tに、2000年代に入ってからもHDD事業を日立に、PC事業をレノボに、POS事業を東芝テックにそれぞれ売却している。

 コモディティ化するビジネスからの撤退は、大ニュースとして世界中を駆け巡った。特に当時も収益を上げ続けていたPC事業の売却は、衝撃的とさえ言えるものだった。この撤退は、パルミサーノ氏が決断したものだ。

 パルミサーノ氏は「大事なのは、何をやめるのかということだ」と言う。

 「製品、アイデア、サービス——成功したものには、感情的な愛着がある。パソコンもそうだ。パソコン(事業の拡大)は、日本IBMも非常に貢献したし、業界を作り替えることにもなった」とパルミサーノ氏。

 しかし、「PCは、IBMの中心をなさない、テクノロジ業界の中核をなさないと気づいた。百数十億ドル相当が消えることになるため、批判にもさらされた。しかし、今やもう批判する人はいない」と、謙虚に振り返った。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

  5. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]