ITが大切であることは十分理解している副社長。専門家ではないのに、IT投資の判断でもポイントを外しません。正にビジネスのプロ=経営者なのです。
ガートナー ジャパンの宮本認氏がITの本質を追究する本シリーズ。これまで4回に渡り副社長を相手にITを体系的に解説してきました。
ITには大きく二つの進化の潮流がありました。一つは「伝票・台帳・帳票の進化」、もう一つが「文書の進化」です。
ここまでを踏まえて、副社長はこんな疑問が浮かんだようです——ITってどうして進化するわけ?(ZDNet Japan編集部)
変化を支えているもの
「ここまでが、現代までの概観です。正直言って、すべてに言及できたわけではないですが、概ね、押さえることができていると思っています」
「たとえば、押さえられていないものって何?」
「例えばですね、企業間同士のネットワーク化は、結構進んでいます。金融機関とか、流通業ですとか。日本は、これらのネットワークが進んでいるほうかもしれません。また、電子マネーやポイントカードなど、日常生活で利用しているユーザーと企業をつなぐ情報の流れもあります。さらには、R&Dの現場などで利用されているCAD/CAMなどの設計を支援するシステムの発展などもあります。そして、FAとも言えますが、プラントの運転を監視するシステムもあります。さらには、最近のエレクトロニクス製品や自動車などでふんだんに使われている組み込みソフトの世界もあったりします」
「あぁ、そうか……確かに。いろいろ、あるよなぁ」
「ただ、副社長の企業には大きく影響ないかなぁ、とも思いまして、多くの人に関係がありそうなもので、ちょっと話を組み立ててみました」
「うん。その辺はいいんだけど……」
「はい。なんでしょう?」
「どうして、進化するわけ?」
「ですよねぇ、気になりますよね。ものすごく端的に言うと、3つです」
「いいなぁ、宮本君のその端的さ」
「はい。半導体の進化、ネットワークの進化、プログラミング・ソフトウェア技術の進化です」
「うん。なるほど」
「半導体は、半導体メーカーが担っています。ネットワークは、通信会社とそのファミリー企業が、プログラミング・ソフトウェア技術はシリコンバレーが担っています。半導体の進化でコンピュータの速度と容量が加速度的に増加し、ネットワークの進化でネットワークの速度と容量が加速度的に増加しています。プログラミング・ソフトウェア技術が一番イメージしにくいと思いますが、より便利になるような『サービス』を作ったり、より早く処理できるように開発方式を変えたり、といったことがここの進化に該当します。このプログラミング・ソフトウェア技術の部分は、『規格』の世界と絡んでくるので、説明を始めると非常に奥が深いのですが、副社長にはとりあえずいいかなぁと思います」
「どうしていいの?」
「はい。社長は、進化させる側ではなく、進化して、みんなが使っているものを使えばいいからです。そこだけ、気を遣ってもらえばいいと思います」
「うぅん。技術的なことひとつひとつに精通しろってことじゃなく、流行っているものを使っておけば間違いないってことか?」
「その通りです。それで、十分だと思っています」
「ま、そうだよね。ファッションブランドやってるわけじゃなくって、ファッションブランドの服を買ってる立場だもんね、私は」
今、変わろうとしていること
「やっと、最後の話です」
「うぅん……想像以上に聞けたよ。宮本君、やるじゃない」
「おかげで僕、ヘトヘトです。でも、最後の話です。それは、今後、どうなるか? ってことなんですが」