エネルギーの『見える化』が生み出すデータセンターの効率化:第7回--データセンターの見える化

佐志田伸夫 シュナイダーエレクトリック株式会社

2012-09-18 14:14


 データセンターの各種管理階層を図1に示します。

図1 データセンターの管理階層 図1 データセンターの管理階層
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 最上位層は「人」「ビジネス」にかかわる「ビジネスマネジメント階層」です。その下位に「アプリケーションマネジメント階層」「ネットワークマネジメント階層」があり、さらにそれを支える部分が、前回紹介した「DCIM(Data Center Infrastructure Management)階層」。ITハードウェアとプラットフォームを監視・管理・制御(見える化)するツールがDCIMです。

 従来はこのようなツールが無かったため、データセンターを運用する人達は、Excelなどの表計算ソフトとVisioやCADなどの図面ソフトを使って人手で管理していました。しかし、人手に頼る部分が多いとデータセンターの規模拡大に比例して手間が増えてしまいますし、担当者が変わるとそれまでの状況が把握できなくなったり、データをすべて入れ替えなければならなくなります。また、前回までに述べてきたようなエネルギー効率向上、IT機器の収納密度の向上などのニーズに対しても、管理の手間や人員を増やさずに運用しなければならないため、管理ツールの標準化が必要になってきています。

 更にその下で、データセンターのインフラやファシリティの部分、電力監視・制御や空調の温湿度の管理をする部分が「ビル管理階層」です。従来は、ビル管理システム(BMS)や、DCFM(Data Center Facility Management)と呼ばれるツールが使われていました。

 これらに対して、DCIMはITインフラのアセットマネジメントの流れから来ています。しかし現在では、IT担当者がシステム全体の可用性やエネルギー効率性を意識した上でサーバの設置場所を検討する時に、その場所の空調や電気が足りるかといったファシリティの部分との整合性を考える必要が増してきたため、ITインフラの管理もファシリティの管理も、すべてひとつのツールでカバーしたほうが効率的になってきました。

 そこで、ITインフラのDCIMと元々ファシリティインフラに強いDCFMとが一緒になり、より広義のDCIMとして定義されるようになってきています。

 例えば、配置図上でどのラックにどの位の電力・空調容量、スペースがあるかを表示したり、実際に画面上でラックにサーバを搭載する状態をシミュレーションして搭載可否を判断したりすることができます(図2)。「空調容量を補強すれば、電源とスペースはあるので、データセンターを有効活用できる」といった判断が簡単に下せるようになるわけです。

図2 DCIMの画面例 図2 DCIMの画面例
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 これからデータセンターを建てようとする場合に最初から運用管理のツールとしてDCIMの導入を検討することはもちろんですが、既存のデータセンターの更新を図る場合や、さらに、本来データセンターが目的でなかった建物をデータセンターに改築するような場合にもDCIMの導入による効果は得やすいと言えます。

 次回は、まとめとして「データセンターのITとファシリティの管理の融合」について解説します。

参考資料:
シュナイダーエレクトリック株式会社 ホワイトペーパー
#107 How Data Center Infrastructure Management Software Improves Planning and Cuts Operational Costs

佐志田伸夫氏
著者紹介:

シュナイダーエレクトリック株式会社 取締役 佐志田伸夫
技術士(電気電子部門)

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