ほとんどの場合、データセンターにおけるITの管理・運用とファシリティの管理とは別々の部署が担当しています。このため、それぞれの部署から出てくるデータ、知識ベースや運用は、別々に行われていました。
例えば、新しいIT機器を導入したいというIT側の要求があった場合には、ファシリティ側は電力・空調などの容量に余裕を持って提供します。責任範囲を分けるために、容量に余裕を持たせるわけですが、そのためにオーバースペックな設計になり、余計なコストがかかりがちでした。
一方、第3回と第4回で説明したように、仮想化などにより、ITの要求が直接かつリアルタイムにファシリティに影響を与えるようになると、従来のように、ITの管理者とファシリティの管理者とがまったく違う画面を見て別々に管理することはできなくなり、両者が連携して一つのシステムで管理することによって、より広い範囲での効率化が可能になります。組織論のような話になりますが、こうした「ITとファシリティの管理の融合」は海外が先行しており、データセンターマネージャーと呼ばれる人が全部まとめて管轄するようになってきています。DCIMはこのような背景で発展し、ITとファシリティとを融合した広範な領域の統合的な管理(見える化)を目的としています。
例えば、シュナイダーエレクトリックのDCIMである「StruxureWare for Data Centers」は、これまで細分化されていたグループ間を統合するもので、「ITインフラ監視」「ITインフラオペレーション」「ファシリティ電力監視」「ファシリティクーリング監視」の4分野にフォーカスしたソリューションです。日常オペレーションやIT機器のインベントリ管理をサポートしており、IT機器のカタログ機能(電力、空調、スペース容量情報)や監視ダッシュボード、さらに、空調シミュレーションやIT機器の稼動、消費電力情報まで統合され、データセンターマネージャーがすべての情報を把握できるようにサポートしています。また、アラーム機能やネットワークを介した監視機能により、一カ所のセンターから、世界各地のデータセンターを統合的に管理・監視・運用することも可能です(下図)。
DCIMを配備して「見える化」を実現
省エネ化、仮想化されたIT機器を常に最適な状態で運転し、データセンターの効率化を達成するためには、データセンターの設計時点だけではなく、それぞれのIT機器を搭載する時点で十分シミュレーションを実施した上で、常に運転状態(発熱量・温度・風量)をモニタリングしながら、空調設備をダイナミックに(運転)制御することが必要です。
データセンターのITとファシリティを同時に管理・監視するDCIM(Data Center Infrastructure Management)を配備することにより『見える化』が達成でき、システムの可用性を維持しながら運転の最適化やエネルギー効率化、さらにタイムリーなアラームやレポートを活用することができるようになります。
著者紹介:
シュナイダーエレクトリック株式会社 取締役 佐志田伸夫
技術士(電気電子部門)