Adobeが提供するPhoneGapのベースになっているのは、Apacheプロジェクトのもとで開発されている「Apache Cordova」である。
簡単にこれまでの経緯をおさらいすると、PhoneGapはもともとNitobi Softwareによって開発されたもので、2011年にAdobeが同社を買収したことによってPhoneGapもAdobeのツールの一員となった。
それと前後する時期にPhoneGapのソースコードがオープンソース団体に寄贈されることが発表され(寄贈はAdobeによる買収後に行われたが、その準備はNitobi時代から進められていたという話である)、このOSS版は後に「Cordova」と名付けられた。
その一方で、オープンソース化後もPhoneGapの商標自体はAdobeが保持しており、最終的にCordovaベースのAdobe版プロダクトが「Adobe PhoneGap」の名称でリリースされることになった。現在のところ、CordovaとPhoneGapの間には大きな差があるようには見えない。
しかし「付加価値を提供する」という言葉を信じるのであれば、PhoneGapにもEdge Codeのように独自の追加機能が提供される可能性は十分にあるだろう。

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Edge Tools & Servicesに含まれるPhoneGap Buildは、HTMLやCSS、JavaScriptで作成したウェブアプリケーションをクラウド上でさまざまなモバイルプラットフォーム向けのネイティブアプリに変換してくれるサービスである。その名の通り、クラウド上のビルド環境はPhoneGapを利用して構築されている。コーディングの手順はPhoneGapと同様だが、ローカルのPCに対象プラットフォーム用の開発環境を用意しなくてもよいというメリットがある。
PhoneGap Buildは、Adobeによる公式なサービスとして提供される。ただし、Creative Cloud無料メンバーシップに登録すれば、無償で利用できるプランも用意されている。また、Adobeでは同社の開発ツールとPhoneGap Buildとの連携にも力を入れており、Dreamweaver CS6やEdge CodeなどはPhoneGap Buildにアクセスしてモバイルアプリを構築する機能を備えている。OSSを自社のツールやサービス、他のツールの拡張機能として効果的に活用している好例と言えるだろう。
Edge Web FontsとTypeKit
Edge Web Fontsは、オープンソースのウェブフォントをウェブサイトやウェブアプリケーションで利用できるようにするサービスである。Google Web Fontsとも連携し、実に500以上のフォントを無償で利用することができる。Adobe自身も自社の持つフォントの一部をオープンソースで公開し、Edge Web Fonts経由で利用できるようにしている。
Edge Web Fontsは、同社のウェブフォントライブラリサービスである「Adobe Typekit」を活用してホストされているため、パフォーマンスや安定性が高い点が大きな強みとのこと。Typekitは有償のプロダクトである(ただし、無償のトライアル版もあり)。フリーで利用できるフォントに、自社のプロダクトを活用して付加価値を付けて差別化するというのがEdge Web Fontsのスタイルと言える。
このように、Adobeではさまざまなアプローチでオープンソースの活用を試みていることがわかる。Winokur氏によれば、同社では今後も積極的にオープンソースプロジェクトに貢献し、そしてその成果物によってユーザーの生産性向上に努めていくとしている。
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