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実務家ティム・クックの課題、あるいはアップルの自己革新の可能性 - (page 2)

三国大洋

2012-10-05 12:00


「プラグマティズムでどこまでいけるのか」という問い

 そんな具体的なティップスが並ぶ一方で、この記事には「重要な問いかけ」もいくつか含まれている。

 中でも一番気になるのは「クックCEOのプラグマティズムは、これから長い期間にわたって、これまでと同様にアップルの役に立っていくのだろうか」という問いだろう(註8)。

 この場合の「プラグマティズム」は「メンツよりも実利を優先」というくらいの意味かと思う。クックCEOの、特に今年はじめから3月末にかけての大車輪の活躍ぶりは周知の通り。しかし、あの次期に矢継ぎ早に繰り出された数々の判断は、それ以前の「スティーブ・ジョブズ路線」を大幅に上書きするものとして世間を大いに驚かせた。株式配当の実施、中国の工場の労働環境改善策、アップルストアのスタッフの給与引き上げなど、その多くが「ジョブズの残した宿題」を片付けるために採られた「実利優先」の施策だったと思う。先週末奇しくも会計年度の終わり)に公開された地図サービスをめぐる騒動への謝罪メッセージも、そうした流れの延長線上にあるもの——現実的に可能なことはすべてやってみるという類のもので、しかもその手際がこれまで同様、実に見事なものであったといえる。

 この実利主義が、これ以上はありえないと思えるほどうまく機能してきていることも周知の通りだ。

 この一年間にアップルの売上や利益は増え続け、株価は75%も上昇した(一時は過去最高の700ドル台にも達していた)。発表直後に一部で「退屈」との声も上がっていたアップルの屋台骨「iPhone」の新製品であるiPhone 5も、蓋を開けてみれば何のことはない、作る先から飛ぶように売れていく状態になっていると伝えられている。さらに、新しい(インセル技術を使った)ディスプレイの供給不足もなんとか緩和されたという話も出ているから、年末商戦期をふくむ10〜12月期には相当の数を売りさばくことになりそうな可能性も高まっている。

 Businessweekの記事には、クックがCEOになって以来「アップルの『成熟度』『合理性』『価値』が増している」との指摘があるが、そういう危なげのなさは確かに目立ってきているようにも思える。

 その反面、この一文の前半に出ている2つの点——「失われたもの」として挙げられている「創造性」「起業家的な情熱」については、まだこれといった手がかりが見当たらない(註9)。記事で指摘されているように、たとえばジョブズが「答えとなる鍵は見つけた」と言い残して死んでいったテレビ分野の取り組みも、この1年でとくに具体的な進捗があったわけでもない。

 突飛な喩えかもしれないが、相撲でいえば、飛び抜けて強い横綱が危なげのない取り口で勝ち続けている。地図サービスをめぐる騒動のように時々取りこぼしもあるけれど、それもすぐに手が打たれて、結局は「14勝1敗か、13勝2敗」くらいでその強い横綱が「今場所も優勝」という状態。そんな状況が1年以上前から続いてきているのだろう。(次ページ「「カリスマ」と「実務家」」)

註8:クックCEOのプラグマティズムはアップルの役に立っていくのか

The more important question is whether Cook's pragmatism will continue to serve Apple well over the long term.


註9:「創造性」「起業家的な情熱」は失われたのか

It misses Jobs's conspicuous creativity and entrepreneurial fervor, but it's gaining in maturity, rationality, and, yes, value.

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