本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。今週は、NECの山元正人 執行役員常務と、日本オラクルの山本泰典 執行役員の発言を紹介する。
「SIのソフトウェア開発はクラウドサービスが増えても急には減らない」 （NEC 山元正人 執行役員常務）
NEC 山元正人 執行役員常務
NECが9月27日、社内やグループ企業などの開発者が活用しているクラウド型のソフトウェア開発プラットフォーム「ソフトウェアファクトリ」の取り組みについて発表した。ソフトウェア生産革新部門を担当する山元氏の発言は、その発表会見で、今後のソフトウェア開発の行方について自身の見解を述べたものである。
ソフトウェアファクトリは、クラウド上でプロジェクト管理や開発ツールの提供、ソースコードや仕様書の共有、バグ検出などを利用可能にする統合開発環境である。この日、同社はソフトウェアファクトリの利用者が2012年度上期で1万人を超えたと発表。3年後に3万人を目指すほか、今年10月から海外展開を本格化し、2013年度には外販も始める計画だという。
NECでは従来、グループごとに別々の開発手法やツールを利用していたが、それぞれのプロジェクトの状況を把握するのが難しいことから、リスク対応が遅れがちだった。さらに、コスト削減のために生産性の向上が求められていたほか、多くのケースではテストや検証環境用のハードウェアも自前で用意していた状況だったという。
こうした背景を踏まえ、同社ではソフトウェア開発環境の改善と効率化を目的に、2009年から開発環境の集約化および標準化を推進。その中心的役割を果たす統合環境として、クラウド型のソフトウェアファクトリを開発したとしている。
NECによると、ソフトウェアファクトリの利用拡大に伴い、次のような効果が生まれているという。まず、拠点が国内外に分散している場合でも、開発環境や仕様書などを共有化することで作業のやり直しが減り、製造・テスト工程のコストを10～20％削減。また、ハードウェアの用意やプロジェクトごとのソフトウェアのインストールが不要になり、最短2時間で開発環境構築が実現するとしている。
さらに、ソフトウェアファクトリ内に格納されたソースコードを、ツールを用いて自動的に検証し、セキュリティ脆弱性検査やバグ検出などを行うことで、開発者の負担やセキュリティ脆弱性・バグの見逃しリスクを低減したという。
まさにNECのソフトウェア生産革新への強い意欲を目の当たりにした格好だが、気になるのはソフトウェア開発そのものの行方である。クラウドサービス化が進む中で、従来のシステムインテグレーションにおけるソフトウェア開発は縮小するとの見方が少なくない。NECの取り組みに対しては、そんな縮小市場に多大なエネルギーを費やす価値があるのか、という見方もできる。
