アイ・ティ・アール(ITR)は10月10日、オンプレミスでプライベートクラウドを構築するケースと、事業者の仮想プライベートクラウドを利用するケースの構築、運用コストを試算した結果を発表した。ホワイトペーパー「持たないプライベートクラウド~仮想プライベートクラウドの経済価値~」(PDF)として公開されている。
国内企業では現在、基幹系を含む業務システム全般でパブリッククラウドの“規模の経済性”を維持しつつ、システム間連携や固有要件に対応する「仮想プライベートクラウド」への需要が高まっている。クラウド基盤を自社所有すべきか外部活用すべきか、投資効果の観点から検証することが求められている。
そこでITRは、PCユーザー数2500人の中堅クラスの製造業をモデル企業として、4年間の総所有コスト(TCO)を試算した。試算では、すでにパブリッククラウドで稼働するウェブやメールなどの一部のシステムを除いた、サーバ数96台という情報システムを対象にしている。モデルAはサーバを自社でプライベートクラウドで構築して移行(P2V)、モデルBは仮想プライベートクラウドに移行(P2C)するものとしている。
全96台のサーバを毎年24台ずつ4年かけて段階的に移行させた場合、モデルBのP2Cの4年間のTCOは、プライベートクラウドを構築するモデルAよりも約23%、金額にして約4200万円のコストを削減できるという結果になっている。このTCOを資源調達、移行、運用、機会損失の4つに分類して2つのモデルの各コストを比較しても、いずれの領域でもモデルBがモデルAを下回り、コスト優位であることが明らかになっている。
特にプライベートクラウドを構築する際には、機器の調達と保守にかかわるコスト比率が高く、仮想プライベートクラウドではこれを低減する効果が得られるという。仮想プライベートクラウドは、十分な経済価値を備える、あるいはその可能性が高いと説明している。ホワイトペーパーでは、各種のコストシミュレーション結果に加えて、仮想プライベートクラウドの利点と将来展望についても提言している。