本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今週は、日本IBMの三瓶雅夫 常務執行役員と、日本HPの橘一徳 統括本部長の発言を紹介する。
「今後、クラウド化が進むと、これまでにも増してハイエンドUNIXサーバの役割は大きくなっていく」 (日本IBM 三瓶雅夫 常務執行役員)
日本IBMが10月4日、同社のITインフラに関するビジョン「スマーター・コンピューティング」の強化について発表した。システム製品事業を担当する三瓶氏の発言は、その発表会見で、同ビジョンを具現化する主要な製品であるハイエンドサーバの重要性について語ったものである。
日本IBMの三瓶雅夫 常務執行役員
IBMが同ビジョンを打ち出したのは昨年だが、今回の発表を機に、その戦略の内容を一部変更した。これまでは、ワークロードの最適化によってコスト削減を図る「オプティマイズドシステム」、新しいサービスを迅速に提供する「クラウド」、意思決定のための知見や洞察を図る「ビッグデータ」の3つを戦略の柱としてきたが、今後は新たに「セキュリティ」を追加。一方で、オプティマイズドシステムを「クラウド」に組み入れ、ビッグデータを「データ」とした。
これにより、同ビジョンの新たな戦略の柱は、ITインフラの効率化と新しいサービスの迅速な提供を行う「クラウド」、即行動につながる洞察を導き出すリアルタイム分析を行う「データ」、セキュリティ脅威やコンプライアンスへの対応を図る「セキュリティ」の3つとなった。そして、「スマーター・コンピューティング」に続けて「Tomorrow Ready」というメッセージを付け加えた。三瓶氏によると、このメッセージには「新しい時代の要請に適応する」という意味を込めたという。
こうしたITインフラに関連する重点戦略については、IBMの競合となるベンダー各社もほぼ同様のキーワードを打ち出しているが、3つに集約しているのはIBMだけだろう。それぞれが挙げるキーワードに、各社の戦略の重み付けをうかがうことができる。
また、会見では、新たなビジョンを具現化する新製品群も発表された。その中核製品が、新プロセッサ「POWER+」を搭載し、セキュアな環境で高速なデータ分析処理を可能としたハイエンドUNIXサーバ「IBM Power 770」および「IBM Power 780」である。