「社徳を実践し、エキサイトニッポンを実践する」——。
シスコシステムズ合同会社は10月23日、東京・港区の東京ミッドタウンで2013年度の事業戦略説明会を開催した。
8月から新会計年度に入ったシスコは、昨年度(2012年)の5月22日に日本法人設立20周年を迎えた。代表執行役員社長の平井康文氏は、新たな事業ビジョン「エキサイト、日本!」を掲げてさらなる成長への決意を示した。

ビデオメッセージを寄せたジョン・チェンバースCEO
会見では、米Cisco Systemsで会長 兼 最高経営責任者(CEO)を務めるJohn Chambers氏からのビデオメッセージが放映された。その中でChambers氏は、日本法人がこの1年で30%以上の成長を達成したことを明らかにした。その結果、Chambers氏が高業績の各国法人を表彰するプログラム「Chariman's Choice Country Award」を、日本法人は2年連続で受賞することになったという。
「今年は別の国にアワードを贈ろうと思っていたが、シスコジャパンの業績は際立っていた。この賞を再度授与することに迷いはなかった」とChambers氏は述べ、日本法人の功績を称えた。平井氏は米本社のシニアバイスプレジデントに昇格、本社としても日本へのコミットメントを強めていることを強調している。
「成長」ではなく「高品質」の経営を強調
シスコシステムズは2012年度に「ITからBT(ビジネステクノロジ)へ」をテーマにして事業を展開してきた。その中で直近1年の成果として平井氏が掲げたのは、2011年度 日本経営品質賞 大規模部門の受賞だ。「これまで5年の間、受賞企業がなかった」(平井氏)という同賞。2011年度に初めて申請し、初回でその栄誉に浴することになった。
また、大阪オフィスの移転にあたっては、ワークスタイルとして役員を含めた全従業員をフリーアドレスとした。「パーティションは一切無し。(会議などでは)ビデオ活用を積極的に推進した」と平井氏は言う。7月に移転して以降、約100社の顧客が見学に来たという。そのほかにも7月には東京本社にコラボレーション体験ショーケースを開設。製品紹介の場ではなく、新たなワークスタイルを顧客が体験できるように設計した。
日本経営品質賞の受賞は、ワークスタイルの変革に取り組んでいる点も評価されているようだ。しかし、より重要なのは単に「働き方を変える」ことを目的とするのではなく、企業としてのビジョンとそれを基にした全社戦略、そして戦略を実行する各部門が、同じ方針を持って事業に取り組んできたからだと言えよう。ワークスタイルの変革はその一角だ。
事業面では、KDDI、NTTコミュニケーションズ、IIJグローバルソリューションズ、リコーと協業。各社はシスコシステムズのアーキテクチャや製品、技術を活用して、ユニファイド・コミュニケーション・サービスをクラウドサービスとして提供し始めた。
“モノのインターネット”への取り組みを加速
2013年度の事業戦略を説明する前に、平井氏は「1990年のクリスマスを覚えていますか」と問いかけた。この日は世界で初めてインターネット上のECサイトで買い物が可能になった日だという。
「1990年のクリスマスから今日までで7973日を数えた。ある意味、非常に短い期間だといえる。この間、社会は資源や賃金を分配する工業社会から、すべてのものをシェアできる知識社会へと移り変わった。モノ・コトがエクスペリエンス(体験)へと大きく進化したのだ。ネットは新しい社会基盤になり、電機、ガス、水道に次ぐ第4のユーティリティになった」(平井氏)
一方で平井氏は、インターネットに関する別の数字も示して見せた。それは、世の中に存在するあらゆるモノのうち、インターネットに接続しているものは「たった1%」という数字だ。言い換えるなら、99%のモノはインターネットに接続されていない。「これは大きなオポチュニティになる」と平井氏は言う。いわゆるInternet of Things、モノのインターネットだ。
ネットで初めて買い物ができた日から7973日。それが今、たった60秒の間に1億6800万のメールが飛び交い、iPhone向けに1万3000本以上のアプリがダウンロードされ、50万のコメントがFacebookに寄せられるような社会を迎えた。
「本日誕生した子どもたちが成人して仕事に就くとき、その65%は今日存在していない仕事につくだろうという予測がある。多くのモノをネットに接続することで、仕事、生活、遊び、そして学びを変えて、新たな価値を創造していく」(平井氏)
こうしたチャンスを前にして、平井氏は日本に「Internet of Things インキュベーションラボ」を開設することを明らかにした。同社では従来のコンピューティング利用の姿——人とアプリケーションの間の通信に加えて、M2M(Machine to Machine:機器同士の通信)やM2H(Machine to Human:機器と人との間の通信)が融合して新たな価値が生まれると考えている。そこで、実際にデータを発するデバイスやセンサとインターネットの間に、「フォグコンピューティング」という新たな層を設け、この領域での事業展開を加速させる意向だ。
“社徳”を創出する企業を目指す
2013会計年度は、まずビジョンとして「Excite Nippon! 〜Bridging our tomorrow through the connected human network〜(ヒューマンネットワークを通して私たちの明日をつなぐ)」を掲げる。この事業ビジョンは「次の5年、10年、20年につながるビジョンステートメント」だという。
その上で、事業戦略としてクラウド連携の「Connected Clouds」、新しいライフスタイルの「Connected People」、ビッグデータ創出の「Connected Everything」を3本柱とした。より具体的にはそれぞれの領域に、データセンター、コラボレーション、ボーダレスネットワークといった事業分野が当てはまることになる。これら3領域を包含するのが「インテリジェント ネットワーク アーキテクチャ」となる。
平井氏は「この3つの領域をつなげられるのは、地球上でシスコだけだ」と自信を見せた。
事業目標としては、顧客およびパートナーにより高い価値を提供する「Customer Partnership」、企業市民活動へのコミットメントを示す「Corporate Citizenship」、社員のワーク・ライフ・インテグレーションを推進する「Cisco Family」に力を注ぐ。
平井氏は「社徳を創出する企業になりたい、そんな組織になりたいと強く願っている」と決意のほどをにじませた。
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