米Wyse Technologyはシンクライアントのリーダー的企業として大きな実績を上げている。全世界で2000万台以上の製品を出荷し、ユーザーはのべ2億人以上に達している。
2012年5月に米Dellに買収された影響はあるのか。Wyse Technologyでアジア太平洋を担当するゼネラルマネージャー、Ward Nash氏に聞いた。
Dellとの一体化で、複雑でなく簡潔なモデルにより、付加価値を提供できる
--WyseがDellに買収されたことの意義は?
いま、クラウドへの移行が世界的な潮流になっている。クラウドは、かつてのメインフレームやダム端末と同様、データの一元化や管理がしやすく、セキュリティの点でも優れている。収縮している市場もある一方で、シンクライアントの市場は非常に高い成長が期待されている。Dellに買収されたが、経営統合により多様なエンドポイント形態を提案できるようになった。
Dellと一体化したことで、我々の守備範囲は広くなった。XenAppのようなプレゼンテーション型(ターミナルサーバ)、あるいは、VMware ViewのようなVDI(仮想デスクトップ)を使用する形式、また、クラウド型、ストリーミング型、そのほか、共有型ということで、Windows MultiPoint Serverなども含め、さまざまな要素を活用することができるようになった。
Wyse Technologyでアジア太平洋を担当するゼネラルマネージャー、Ward Nash氏
デスクトップ仮想化の問題を解消
それだけではない。デスクトップ仮想化の問題点の1つとして次のような状況がある。ITの進展により、多種多様なソリューション提供の仕方がある反面、それらに必要となる機器、サーバ、モニタなど、数多くの組み合わせがあって、それぞれの製品のベンダーごとにいわば異なるストーリーが生まれ、CIO(最高情報責任者)が混乱したり、導入コストも高くなったりしている。
この点、当社はDellの傘下に入ったことで、サーバ、ストレージからモニタまで、Dellの幅広い製品群を活用することが可能だ。企業は、Dellだけを相手にすればよい。複雑なストーリーではなく、簡潔なモデルで付加価値を提供できる。Dellに買収されたことによる大きなメリットと考えている。
DellがWyseの買収を決意した理由は、彼らがただ単にシンクライアントのハードを欲しただけではなく、Wyseがプラスアルファの価値を有していたからだ。Dellの観点からすれば、シンクライアント自体の重要度は大して高くはないかもしれないほどだ。Wyseの技術、ソフト、組み込み型OS、これまでに培ってきた知識、パートナーシップなど、これらが高い価値を持っていると見たからだといえる。
--Wyseの事業戦略の中核となるのは何か
CIOなどと商談を始める際、その企業が実際に求めていることを見つけるために細かく話を聞く。コールセンター業務のような仕事が中心のタスクワーカーが多いのか、単なるオフィスワーカーが多いのか、高性能なワークステ-ションを使わなければならないパワーワーカーがいるのか、あるいは、モバイルワーカーが中心となるのか。
これらを深く理解した上で仕事に着手するのが、当社の基本姿勢だ。ある組織にどんなユーザーがいて、何を求めているのか、その企業の定義づけを明確にしてから、そのユーザーの属性ごとに、必要とされるアプリケーション、コンテンツ、周辺機器などを見極める。
当社は、これまで長期にわたり、デスクトップ仮想化に取り組んできた。そこから学んだのは、単に製品を販売しているのではなく、いわば概念そのものを提供しているということだ。要するに、デバイスが重要なのではなく、企業が何を達成しようとしているのか、そのゴールを十分に認識し、それに最もふさわしいソリューションは何かを定め、提供することが重要だ。
今の時代、コンピューティングの中心となるのは、デバイスや、アプリケーションではなく、エンドユーザーだといえる。当社は一貫して、エンドユーザーに焦点を当て続けてきた。この姿勢はこれからも維持していきたい。Dellも同じ思想を持っている。どのような優れた技術があっても、エンドユーザーに理解されなければ、意味がない。