10月26日、ついにWindows 8が発売となった。
日本マイクロソフトの樋口泰行社長は「十分な手応えを感じている」と、今後の売れ行きにも自信をみせる。タッチ機能の採用でタブレット市場にも本格的な参入を図り、Windows 95以来、17年ぶりとなる大規模なユーザーインターフェースの改革にも取り組んだ。
樋口泰行社長にWindows 8の取り組みについて聞いた。
--10月26日にWindows 8が発売となりました。手応えはどうですか
発売前日となる25日午後6時からの前夜祭、深夜0時のカウントダウンによる発売、そして26日朝の量販店での発売記念セレモニーにも参加しましたが、皆さんからいただいている反響は非常にポジティブで、「これは行ける!」という手応えがあります。
前夜祭でお客様に説明していた社員からも、Windows 8の機能に対する熱心な質問に感動したり、「すぐにでも欲しい」という声を聞いて喜んだり、といった反応があります。本当に社員が興奮していましたね(笑)
私自身も社長という立場でWindows 8のローンチに関わることができて、大変うれしく感じています。プロトタイプから触っていた製品が、こうやって皆さんに触っていただけるようになったことも特別な感慨がありますね。出産前の心配はあったが、生まれてみたらそれほど心配することはなかった、という気持ちでしょうか(笑)
--日本マイクロソフトでは、発売前までWindows 8に関する情報をかなり絞り込んでいました。これはどのように影響しましたか
競合戦略上、グローバルに統一したマーケティング戦略に則った施策としましたので、従来のWindowsの発売時と比べて事前情報が少ないと感じた部分があるかもしれません。その点ではパートナー各社や我々の社員も戸惑うことがあったでしょう。
ただ、10月26日を境に一気に情報が発信され、それによって「驚き」や「感動」といったものが一気に広がったともいえます。これから半年間に渡るテレビCMを展開するなど、過去最大規模のマーケティング予算を投入していきますから、むしろこれからが本番です。
--事前の準備、そして発売日までの取り組みとその効果については、どう自己評価しますか
100点満点中、95点ですね。
--5点のマイナスはなんですか
いや、本音は100点満点なんです。ただ、性格的に何事にも100点とは言わない方なので(笑)
26日の夕方に量販店の店頭へ出向いたのですが、仕事帰りのビジネスマンをはじめ、多くの方がPC売り場を訪れ、Windows 8に触っている姿を見て、ますます手応えを強く感じました。最初のモメンタム(勢い)は非常に大切です。その部分についてはうまくいったと自己評価しています。
特にこれから力を注ぎたいのが、10代から20代前半の若年層への普及です。ここはWindowsが弱い部分でもあった。キーボードを不要とする世代であり、しかも従来からのソフトウェア資産の継承が不要という世代です。Windows 8が持つポップなイメージを生かしながら浸透させていきたいですね。
--その一方で、企業ユーザーからの反応はどうですか
タブレット端末を企業内で利用したいと考えていても、情報システム部門主導の場合には、どうしてもセキュリティや管理性で課題が生まれ、導入しにくいという声が出ていました。また、ユーザー部門主導で紙のカタログをすべてデジタル化し、タブレットに入れて営業ツールとして活用するといった場合にも、企業システムとの連動を視野に入れた途端、壁にぶつかるということがあった。
こうした課題を解決するのは、やはりWindowsです。そうした点から、Windows 8の登場を待っていたという声があがっています。ここにきて、マイクロソフトに対する信頼感が高まっていることも追い風になっているといえます。
--なぜ今、信頼感が高まっているのですか
私はここ数年、顔が見えるマイクロソフトを目指して、日本マイクロソフトの経営を進めてきました。エンタープライズ分野における体制を強化しているのも、そのひとつの取り組みです。
日本の老舗の企業と強固なパートナーシップを組む上で、なにかトラブルが発生したとき、日本マイクロソフトは逃げないで責任をもってやるのかということを吟味され、さらに突如、製品戦略を変えたり、突如方針を変えたりといったことがないのかも問われる。お客様の不利益になることを、なんの通知もなく行うことはないか、といったことも厳しく見られる。
そうした不安がないことを、ここにきてきっちりとご理解をいただけるようになってきたといえます。
(米MicrosoftのCEO)スティーブ・バルマーをはじめとする米国本社の経営陣は、とにかくお客様指向が強い。私がいままで経験した外資系企業のなかでは、最もお客様指向が強い会社だといえ、品質問題にも真摯に取り組んでいる。
シリコンバレーの会社よりも地味ですが(笑)、強いエンジニアリング魂を持った技術者が多数いて、問題を解決できない自分は許せないという機運すらある。
そうした姿勢がお客様に響きはじめているといえます。
もともとはPCのベンチャーとして生まれた企業ですから、その成長過程でのイメージが残り、製品の成熟度にまで疑問を持っている人がいるのも事実です。しかし、それは遙か昔の話であり、いまは日本の大手企業がマイクロソフトの製品をお使いいただいています。Windows 8でもそうした安心感、信頼感というものを生かしていきたいですね。
--日本では発売が見送られたSurfaceは、今後どうなりますか
Surfaceに関しては、日本ではこのタイミングで出さないということです。まずはパートナー各社のタブレットに力を注いでいくことになります。
ただ、iPadを見ていると1機種で戦えると思う人が多いかもしれませんが、1機種で市場を席巻するのは、一時的には可能であっても、それが継続することはありません。Surfaceも同様に、日本で投入したとしても1機種に過ぎません。むしろ、Surfaceを投入することで、市場全体が活性化すると捉えているデバイスメーカーもあるほどです。
いずれにしろ、Surfaceについては日本でのタイミングを考えていきたいと思っています。
--年末商戦は盛り上がりますか
Windows 8は3年という周期のなかで登場したOSであり、既存の操作環境とタブレットとしての新たな操作環境を実現することができた。そして、企業から個人ユーザーまで幅広くカバーする理想的なOSです。
日本では、250機種以上のWindows 8搭載PCが登場しています。Windows 8をどう生かすかというデバイスメーカーの知恵から生まれたものばかりで、その広がりぶりには私も驚いています。
自分にあったWindows 8搭載製品を選択していただけると思います。デバイスメーカーと協力して、日本の年末商戦を盛り上げていきたいですね。
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