企業:より小さなiPadを配備することはコスト削減につながるものの、それ以上のものはない。このデバイスは革新的なものではなく、特別なものでもない。これは教育市場と末端消費者に向けた製品であるが、Appleの幹部はその「ポイント」について触れていない。つまりこれは、Appleが後れを取ってきた分野で、巻き返しを図るための製品というわけだ。
先のイベントの後に行われた分析でも言及されていたように、このデバイスのポイントは、デバイスそのものにあるのではなく、同社のドル箱であるコンテンツサービスの顧客層を広げるというところにある。このため、企業に対してはいっさい譲歩していない。企業アプリを直接インストールし、専用のデバイスとして使用できるような8Gバイトのモデルは提供せず、コンシューマーを喜ばせることにのみ注力しているというわけだ。
ストレージ容量がiPad 2と同じ16Gバイトになっている点を見ても明らかだ。Appleがスリムダウンした企業向けのiPad miniを提供するという「企業の問題」にまともに取り組んでいたのであれば、価格体系に矛盾をもたらさないよう基本モデルの価格を329ドルよりもずっと安く、おそらくは299ドルで提供するという結論に達していたはずである。しかし、多くの人々が指摘しているように、299ドルという価格はスリム化したiPad miniをさらに小さくしたバージョンとも言える「iPod touch」と同じになるのである。
サムスンやGoogle、Amazon:iPad miniと同様の小型タブレットを販売しているメーカーであるGoogleとAmazonはともに、Appleが後からやって来てクリスマス商戦に先立って売り上げの多くを奪い去ってしまうという恐れを抱いてびくびくしているはずだ。しかし、サムスンはそれほど心配する必要がないだろう。裁判所に提出された書類から判断する限り、同社のタブレットはそもそも軌道に乗っていなかったと言える。韓国の大手電子機器メーカーである同社は、タブレット製品群を世界市場に送り出しているものの、その販売実績は140万台にとどまっている。一方、iPadは米国の2012年上半期だけで3200万台を販売している。
だが、GoogleやAmazonはAppleの攻勢に備えているようだ。つまり、Googleは自社のタブレット事業におけるコストをぎりぎりまかなえる程度の価格設定にしており、Amazonは損失覚悟でKindleデバイスの普及に努めている。