本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今週は、米EMCのJoe Tucci会長兼CEOと、SAPジャパンの松村浩史本部長の発言を紹介する。
「企業組織は市場環境の変化に対して速やかに適応させていくことが肝要だ」
(米EMC Joe Tucci 会長兼CEO)
EMCジャパンは10月29日、米EMCのトップであるTucci氏が来日したのを機に記者会見を開いた。冒頭のTucci氏の発言は、その会見の中で、企業の組織に対する自らの考え方を示したものである。
米EMCのJoe Tucci会長兼CEO
Tucci氏は2012年3月、米Dow Jones社が発行する投資家向け週刊誌『Barron's』において「世界のベストCEO 30」の1人に選ばれた。今回の来日は2008年以来4年ぶりとのこと。
会見に同席したEMCジャパンの山野修社長によると、Tucci氏は2001年からEMCのCEOを務め、過去11年間にわたって73社を買収した。その全てを成功させ、同社の売上高を4倍に、時価総額を6倍にするなどの成長を実現。同社のみならず業界全体の変革に努めてきたという。
Tucci氏は会見で「EMCが考えるITの変革」と題し、同社が現在、とりわけ重点事業分野としているクラウドとビッグデータの最新トレンドおよびEMCの取り組みについて説明した。なかでも最大のキーワードとして挙げたのは「Software-Defined Data Center」(ソフトウェアが定義するデータセンター)という言葉だ。
この言葉は、標準化、仮想化、自動化というステップを経てきたクラウドの次なるトレンドを指すものだという。その意味については関連記事に詳しく紹介されているのでご覧いただくとして、ここでは会見の質疑応答で聞くことができたTucci氏のマネジメント論の一端を取り上げておきたい。
冒頭の発言のきっかけになったのは、ユーザー企業においてビッグデータを活用するのはIT部門ではなくマーケティング部門とみられるが、EMCはそうした市場環境の変化にどう対応するのか、という質問だ。
これに対しTucci氏は「EMCは今フォーカスしているクラウドとビッグデータに適応するため、組織もダイナミックに変えている」とし、これまで買収してきた企業のトップも含めて強力な経営陣が重点事業をマネジメントしていることを強調した。
また、企業買収を成功させるコツを問われると、「まず戦略やビジョンを一致させることが大事。さらに買収した企業の人たちを歓迎するとともに、その事業に対する投資を一層強化し、EMCの営業力をフル活用してさらなる成長へと導くことが重要だ」との持論を披露した。