シュナイダーエレクトリックは、ビルエネルギー管理システム(Building Energy Management System:BEMS)事業で日本市場に参入すると発表した。買収したAPCが従来から展開しているデータセンター向けの事業とは異なり、オフィスなどの商業ビル分野を対象としたもので、国際的に取り組みが遅れているとみられる日本で事業を展開することになる。
同社の代表取締役のSerge Goldenberg氏は、燃料からの発電効率がおおむね33%であることから、「消費者レベルでの1ユニットの節約は発電レベルでのエネルギー資源の3ユニットの節約になる」とし、発電段階での効率化の取り組みに比べて消費者レベルでの効率化には、より大きな成果が期待できるとした。同社は、APCを買収したことでIT分野やデータセンター関連でのエネルギー効率化に関する事業で日本でも知名度が高いが、IT系に限らずワールドワイドで広範なエネルギー管理のスペシャリストとして事業を展開している。
Serge Goldenberg氏
指原洋一氏
同社の事業は、送配電システムから最終的なユーザーのところでの効率化まで、電力網全体をカバーしているが、こうした適用範囲の広さを活かし、より効率的な電力利用を実現できる点も同社の強みとなる。今回の日本市場でのBEMS事業は、国内でも特に効率化への取り組みが遅れていると言われる民生部門のうち、業務利用される建物を対象とした取り組みとなる。
同社のビルディング事業部バイスプレジデントの指原洋一氏は、今回の事業の価値提案として「オープンシステム採用によるBEMSライフサイクルコストの低減」「IPネットワークとの融合による、ビル管理データの有効活用」「ビルエネルギーに関するトータルソリューションのご提供」の3点を挙げ、まずは中小規模(1万~1万5000平米)のビルを対象としたコンサルティングから着手するとした。
「IPネットワークとの融合」とは、具体的なイメージとしては、例えばウェブポータルサイトなどで提供されている天気予報情報の活用などが考えられるという。空調の電力制御の際に、あらかじめ明日の天気が分かっていれば、それにあわせて最適制御が可能になる、といったイメージだ。
BEMSでは、現状のビル内でサイロ型に個別制御されている「照明」「空調」「セキュリティ」などを統合管理することで最適化を図る考え方だが、さらにこうした統合制御されたビルディングを地域内で連携されることで「スマート群管理システム」へと発展させれば、より効率的な電力利用が可能になる。天気予報に基づいて、ある地域の翌日の電力消費量を正確に予測できれば、その情報に基づいて発電側を制御することで必要な電力を無駄なく供給することも可能になるわけだ。
こうしたスマート群管理システムは今すぐ実現できるというものではないが、同社のビルディング事業では、こうしたあり方が最終的なゴールになるという意識をもって事業に取り組んでいくという。
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